(本ブログは7 Reasons Why the CPO and CSCO are Smarter Togetherの抄訳です。)
サプライチェーンの課題は、長年にわたり主にコストと効率とされていました。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、ビジネスや業界を問わず、経営幹部はレジリエンス(回復力)および事業継続性を最も重視するようになりました。組織が混乱に対処してコロナ禍後の世界に備える中で、最高サプライチェーン責任者(CSCO)の存在が注目を集めています。
また、購買・調達部門も、従業員を保護する個人用防護具(PPE)の確保や、直接材を一次調達先から入手できなかった場合の代替調達先の手配などで重要な役割を担っています。Procurement Leadersの最近の調査では、購買・調達部門責任者(CPO)の54%がCEOと定期的なやり取りがあると回答しており、購買・調達部門の責任者は今や重要なステークホルダーと見なされています。つまり、購買・調達部門とサプライチェーン部門は、コロナ禍で浮上したさまざまな課題に立ち向かっているといえます。
より成熟した先進的な組織では、購買・調達部門とサプライチェーン部門のマネージャ同士が非常にうまく連携し、ビジネス全体の目的をサポートするために緊密に協力しています。しかし、いくら望んでも、組織の障壁や技術的な制約があるためにそうすることが難しい場合もあります。混乱が常態化する中で、サプライチェーンプランニングとSource-to-Pay(S2P)のサイクルが動的に連携する必要性は高まっています。新型コロナ感染症の世界的拡大に関わらず、今後ビジネスは根本的に変化し、そうした連携が不可欠になっていきます。ここでは、以下の点について検討しましょう。
1. 「チャイナ・プラスワン」戦略の導入
ビジネスにおける回復力・弾力性(レジリエンス)を高める取り組みの1つとして、代替供給元の確保があります。さまざまな業種の企業が供給元を中国以外にも広げようと努めており、アパレルやソフトグッズ(非耐久消費財)など一部の業界では、すでに中国以外の国から広く調達しています。自動車業界は、地域のハブ&スポークモデルへの融合を進めています。製薬業界では、主要な出発原料(KSM)や医薬品原薬(API)で中国に大きく依存しており、規制が厳しく多額の資本が必要な性質を持つ業界であることからも、供給元を多様化するためにかかる時間ははるかに長くなりますが、取り組みはすでに始まっており、今後も継続していくでしょう。組織がこうした取り組みを進める際には、サプライチェーン部門と購買・調達部門の意思決定者は共に協力して、レジリエンスの向上とサプライチェーンへのコスト的影響のトレードオフ分析を実施することができます。
2. 新製品の迅速な市場投入と旧製品の段階的な廃止
デジタルディスラプターの出現や、資産を持たず動きの速いスタートアップ企業の登場に伴い、市場においては新製品投入の競争がこれまで以上に目立つようになっています。化粧品など一部の業界では、新製品の発売が年間売上高に占める割合は30%を超えています。調達やサプライチェーンがサイロ化していると、大幅な遅延が発生し、収益機会が失われる一方でコストが増大しかねません。新製品の投入と併せて、既存の製品や部品の段階的な廃止も、サプライチェーンと調達が協力して取り組む必要のある領域です。それができなければ、部品や原材料が無駄になってしまうおそれがあります。
3. サステナビリティとダイバーシティの重視
ESG(環境、社会、ガバナンス)に対する株主の積極的姿勢や、DEI(ダイバーシティ、公正、インクルージョン)に対する従業員の意識変化を受け、企業は、近年、社会正義と製品のサステナビリティに関する監督と報告の責務を果たすよう迫られています。消費者の60%以上は持続可能なブランドにより高い金額を支払いたいと考えているため、供給体制全体の透明性を確保することには商業的な動機や根拠もあります。それにはサプライヤーの構成を常に見直して変更する必要があります。サプライチェーンチームと調達チームが連携していなければ、たとえばサプライヤーが児童労働に関与したり、施設周辺の水に汚染物質を放出したりしていたことが発覚した場合、組織は思いがけず否定的な報道に直面しかねません。ソーシャルメディアの力を得た消費者運動の時代において、こうしたニュースは極めて有害な影響をもたらすおそれがあります。
4. サプライヤーの流動性の確保
サプライチェーンチームは、サプライヤーを供給コストの総額(トータル・ランディッド・コスト)やサービスレベルの観点から分析・評価することができますが、一方で調達チームは、早期支払いを行ったり資金へのアクセスを提供したりすることで、不確実性の時代にサプライヤーの流動性を確保できます。とりわけ自動車業界などサイクリック性質を持つ業界では影響が特に大きくなる可能性があり、供給元に多様性を確保することが極めて重要です。一般的な車に使われる部品が3万点以上に及ぶことを考えると、多重構造ネットワークにおいて供給ベースがシングルソース(単一サプライヤーからの調達)である場合、リスクは非常に高くなります。調達チームは、サプライベースを入念に吟味して必要なサポートを提供することで、サプライヤーの倒産や、また、自社の急な生産停止という事態を防ぐことができます。生産活動への影響は、サプライヤーが早期に支払いを受けなければ、はるかに大きくなることがあります。
5. 規制変更への対応
サプライチェーンのリーダーは、調達に大きな影響を及ぼし得る規制の変更があれば確実に把握できるように、調達担当者との連携を強化する必要があります。たとえば、米新政権は「バイ・アメリカン(Buy American)」政策を明らかにしていますが、この政策は国産品の使用義務を引き上げて、外国製品を購入するための抜け穴をふさぐことに焦点を当てています。調達チームはこうした規制の動向や影響を把握する態勢をより整えることで、サプライチェーン担当者にとって信頼できるアドバイザーとなることができます。
6. サイバーリスク、司法リスク、財務リスクへの備え
製造施設や配送施設は、設備の改修や新世代の設備へのアップグレードを通じてクラウド化を進めており、サプライベースの信頼性や確実性に関する理解を深めることがこれまで以上に重要になっています。悪意のある不正なサプライヤーがいれば、生産や流通のプロセスを停止させてしまいかねません。調達チームは、サプライヤーを厳選する取り組みを支援できます。それだけでなく、司法リスクや財務リスクがないかサプライヤーベースを継続的に監視することで、サプライヤーに関するリスクの先行指標をサプライチェーンチームに提供することができます。
7. 変化する物流ニーズに合わせた調整
組織は長年にわたり、フォワードロジスティクスで相応の能力を構築してきましたが、Eコマースによる返品の増加や循環型サプライチェーンへの関心の高まりから、リバースロジスティクスが注目を集めています。こうしたニーズに対応するため、サプライチェーンのリーダーは外部のプロバイダーに目を向けるようになっています。組織は物流キャパシティの激しい変動に直面しており、最近もコロナ禍の初期に港や国全体のロックダウン(都市封鎖)でキャパシティが過剰になった後、裁量的支出カテゴリーの需要が急回復し、海上輸送と陸上輸送の両方で深刻なボトルネックが生じました。
先ごろ発生したスエズ運河での大型コンテナ船座礁事故に見られるように、予想外のさまざまな事態から物流が大きな混乱に陥るおそれがあり、多くの人はそうした事態を見落としてしまっていた可能性があります。私たちは、予期せぬ出来事やありそうにない事態に備える必要があります。それができなければ、企業は何年にもわたって代償を払うことになるでしょう(記事『Container backlog, global supply chain disruption from Suez Canal crisis could take months to clear.(コンテナの積み残し:スエズ運河の危機によるグローバルサプライチェーンの混乱は解消に数カ月かかる可能性も)』を参照)。
サプライチェーンロジスティクスチームは調達チームと緊密に連携し、状況を管理してキャパシティを確保するとともに、適切なキャパシティ予測を立てることで、制約の厳しい環境では費用のかかることもあるスポット購入を選択せずに済むようにする必要があります。
CPOとCSCOの連携で、よりスマートに
企業とその関連サプライチェーンが引き続き外部要因から大きな影響を受けている現状では、CPOとCSCOが連携と協力を強めることで、組織にとって持続可能な競争優位が生み出されます。
[参考資料]
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