ESG経営、サステナブル経営の推進はトレンドではなく重要な成長戦略
冒頭、イベントのテーマでもある「サステナブル経営」の企業視点の定義について、小関は「サステナブルな社会の実現」と「企業の持続的な成長」の両立を挙げます。
2015年、国連総会が「SDGs」(持続可能な開発目標)を採択。2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットが定められ、持続可能な世界実現に向けた環境の配慮などの取り組みは、企業、個人問わず日常のものとなりました。
先行して環境、社会、ガバナンスを軸に企業のサステナブルな社会への取り組みを評価・監視するESGの枠組みも定着。その評価によって投資先を選別するESG投資も市場に浸透し、下図に挙げるように、消費選好や就職先の選定基準としても重視されるに至っています。
こうした流れを受け、企業では「エネルギー効率の向上」「温室効果ガス排出量の削減」「現代奴隷制度廃絶」「サプライチェーン多様性の向上」などを、ESGに取り組む上での優先順位に挙げています(Coupa調査。従業員数1000名以上のグローバル企業に務めるビジネスリーダー800人対象)。
一方、同調査でESGに取り組む上での課題のトップ3に挙がるのは「財務負担」「リスク管理のためのシステムがない」「計測・分析のツール、方法が未確立」。実行・計測のための環境整備がハードルになっていることがわかります。
様々な課題がありつつも、「ESG経営、サステナブル経営の推進はトレンドではなく、今後、最も重視すべき成長戦略の一つ。企業は利益を社会のために犠牲にするのではなく、サステナブルな社会の実現と利益追求のトレードオンを目指さねばならない時代に突入しています。」と小関は強く訴えます。
つまり、企業はイノベーションの推進と人権問題の配慮やサプライチェーンの多様性に代表する各種リスクの防止、そして財源・利益の確保をサステナブルな方法で実現していかねばならない。そのためには、サプライチェーン全体に関わるステークホルダー全員でデータを集約し、短期および長期的な目線で適切な意思決定をしていくことが肝要と提言します。
デジタルの力で「ダイナミック・ケイパビリティ(企業の変革力)」を強化
では、全社一丸となってサステナブル経営を、どこからどう取り組むべきか。小関は3つのポイントを挙げます。
1つ目が会社内の情報、外部の情報を可視化すること。2つ目が情報に基づき意思決定すること。3つ目が、そのサイクルを定期的、継続的に改善すること。
そのためのプラットフォームとして、Coupaが提唱しているのがクラウド型プラットフォーム『Business Spend Management(BSM)』です。
一般的にSpendが意味する「支出」はコスト、支出管理の方法といえば「節約」と捉えられがちですが、Coupaでは「支出=投資」とも捉えられると考えています。購買・調達、支払、財務等のプロセスを1つのクラウドプラットフォームに統合し、効率化、標準化を実現することで組織における支出の価値を最大化。より知的な支出を実現することで、継続的なビジネス改善、イノベーションの推進をサポートするものです。
また、イノベーション推進においては、昨今の変化の激しい時代にあって、企業の変革力、戦略経営論で言う「ダイナミック・ケイパビリティ」を備える必要性が叫ばれつつも、その実現は簡単なことではありません。
そこで力を発揮するのがCoupaのBSMのようなデジタルソリューション。「ダイナミック・ケイパビリティ」で必要とされる3つの能力、感知、捕捉、変容に必須となる、データの蓄積、可視化、次に実施すべきアクションの推奨などは、デジタル技術が最も得意とする領域です」。
430兆円を超えるコミュニティデータを基に調達購買の適正化を実現
それら分析や意思決定の根幹となるデータについても、Coupaは2006年の創業以来、2500社以上の顧客に利用され、800万社を超えるサプライヤーの直接的、間接的な活用により、過去の追跡取引データの蓄積は430兆円以上に上ります。
「匿名化された状態で得られるコミュニティデータは、お客様にとって必ず大きな価値をもたらし、イノベーションを起こす源泉になりうるものと考えています」。
コミュニティデータの具体的な活用法、適用範囲としては、自社の条件に合ったサプライヤーや支出の最適化機会の発見などが手軽に実現。
人権問題の配慮など、サプライチェーンにおける各種リスクの防止、特定、対処についても豊富なデータを基にサポート。サプライチェーンリスクを考慮したネットワークデザインの構築が可能となります。
「リスク管理の本質は決して保守的になることでもなければ、挑戦を回避することでもありません」。
スキー、スノボなどのスポーツ競技が、適切な形で「止まるべき時に止まれる自信ある」からこそ、ここぞという勝負時にスピードを出せるように、ビジネスにおいてもチャレンジをしていく上で、必要な時に「止まる、やめる」意思決定をするためのツールが必須だと指摘します。
間接材購買の領域にこそ財源確保のポテンシャルがある
さらに、多くの企業にとって喫緊の課題となっている、「Scope3」のカテゴリーに入るサプライヤーから排出された間接的なCO2排出量への対応についても、可視化、分析が可能となる機能を提供しています。
小関は前段で課題となったサステナブル経営への取り組みにおける財源・利益の確保について改めて言及。
利益を上げるには売上増加、あるいは支出削減の2つの方法がありますが、「売上増の不確実性の高さに対し、支出は現状を可視化し、方針を決めればコントロールできる余地が大きく、高い確率で削減達成が可能です」と言います。
既に多くの企業で、原価低減・最適化に取り組んでいる現状下、まだ改善の余地があると指摘するのが間接材購買の領域です。
売上1兆円の大手企業で、間接材購買の平均金額は500~1000億円。Coupaの過去データから鑑みて、その購買費用を仮に5%程度削減できたとして、25~50億円の利益が生まれる計算です。
間接材購買の最適化を通じ、生まれてくる財源をぜひ成長戦略に充て、イノベーション創出を加速化していただきたいと小関。
最後に「サステナブルな社会の実現と持続可能な成長の両立を、私共Coupaと皆様のコミュニティで実現しましょう」と力強く提言し、セッションを終了しました。