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アマゾンジャパンの調達リーダーに聞く、不確実な時代を乗り越えビジネスを加速する次世代の購買戦略

複雑化する外部環境に対して、調達・購買部門はどのような戦略をとるべきなのでしょうか。

2025年7月29日に開催されたCoupa主催のイベント「Inspire World Tour Tokyo〜持続的成長を実現する支出変革とAI活用の未来〜」に、アマゾンジャパン合同会社 Amazonビジネス事業本部 事業本部長の石橋憲人氏と、グローバル調達事業部 アジアパシフィック調達本部 統括本部長の内山一郎氏が登壇。石橋氏を聞き手に、同社で調達のリーダーを務める内山氏がアマゾンジャパンの次世代調達戦略を紹介しました。

高度な調達戦略でサプライチェーンリスクに対応

昨今、調達・購買を取り巻く環境は複雑化しています。内山氏は、日本での調達の動向としてサプライチェーンの地政学的なリスクおよび生成AIの台頭を挙げ、調達の進め方が根底から変わってきていると述べます。

「アジアではサプライチェーンの不確実性が以前に増して高まっています。また生成AIの登場で、Amazonでもデータ分析が自動化されており、より高度な調達戦略にシフトしています」

こうしたリスクに対応し競争力を維持していくために、システム化や新しい技術の導入を迅速に進めるとともに、システムや技術を使いこなせるようチームメンバーのスキルアップが必要であると内山氏。

「導入するテクノロジーの取捨選択も重要です。それらを活用することで適切な意思決定ができるほか、サプライチェーンリスクの回避も可能になります。顧客や組織に対して価値を生み出していくために、人とシステムの双方の視点から検討を重ねています」

これに対して石橋氏は世界でも同じ動向であるとした上で、法人・個人事業主向けのEコマース『Amazonビジネス』を紹介。Amazonの世界中に張り巡らされた物流ネットワークやAWSの最新テクノロジーを駆使して顧客の購買プロセスを効率化し、本業に注力できるようサポートしているといいます。

「こうした戦略的な購買をSmart business buyingと呼んでいます」と石橋氏。その本質は、インフラの整備ではなくインフラを使ってビジネス課題を解決することであり、以下3つの柱から成っていると説明します。

  1. 想定外の事態にも対応できる強いサプライチェーンづくり
  2. 最新のテクノロジーを駆使した購買プロセスの最適化、コストの見える化
  3. ユーザーからのフィードバックによる進化

マーケティングインテリジェンスでサプライチェーンを強靭化

1つ目の柱であるサプライチェーンの強靭性を高める施策として、内山氏は「Low-Cost Country(LCC)ソーシング戦略」を紹介。国・地域ごとの強みを生かすことで調達ルートの集中を避け、地政学的なリスクの分散を図っています。

こうした取り組みにおいてAmazonが活用しているのがマーケティングインテリジェンス。外部のデータベースやAmazonに蓄積されているデータを取り込み、AIを使ってあらゆるサプライ情報の中で何が最適解なのかの決断を支援してくれるものです。

「マーケティングインテリジェンスは、調達から廃棄に至るまでのトータルコストオーナーシップに焦点を当てて長期的な評価ができる点に価値がある」と内山氏は強調します。

AI活用による洗練された購買アプローチ

2つ目の柱について、内山氏は価格交渉に関するAIツールをローンチする予定だと話します。「リアルタイムのマーケットデータと、社内で築き上げているShoud-Cost(あるべきコスト)を組み合わせることで、包括的な価格に関するインサイトを導き出すことができます。過去のコストモデルやBOM(部品構成表)のレビュー、商品価格、労務比率などを取り入れて、AIが最適な選択肢を示すので、バイヤーが判断するプロセスの時間短縮に有効です」と説明。主な機能として、契約の分析や、バリューエンジニアリングによる機会の創出、マーケティングインテリジェンスなどを紹介します。

「これまではいわゆる集中購買でコストを下げていましたが、これからはトータルコストの観点から全てのコストを洗い出し、マーケティングインテリジェンスで得られた情報と組み合わせてAIに最も望ましい調達を導き出させる、より洗練された購買アプローチを検討しています」と内山氏。この新しい手法が、複雑性が増すサプライチェーンを管理する上で有効だと主張します。

自社のサービスをユーザーとして検証できる強み

Amazonビジネスの最大の顧客はAmazon自身であると石橋氏。「私たちが私たち自身のサービスをユーザーとして検証でき、リアルタイムで改善できる機会がある」と説明します。

内山氏は実際にAmazonビジネスを使う立場から、何億点という商品数の多さはAmazonの強みである反面、テールスペンド(非計画購買)においては、類似品が多いために商品選択に時間がかかってしまうと指摘。その事例として、倉庫で使用する作業用手袋の購買を挙げます。

本来、費用対効果の高い安全な手袋を調達すべきところ、現状では全国各地にあるそれぞれの倉庫が好きな手袋を購入しています。そこで各倉庫が購入している商品のデータを集約してAIで分析し、試験的に一部の倉庫でAIが指定した商品を推奨品として購入してもらったところ、15%のコスト削減に成功したといいます。

「テールスペンドはかき集めると結構なインパクトになります。現場を変えていくには、無駄を見える化することが必要です」と内山氏。理論的には30%削減できるといい、そのために調達すべきアイテムを指定するシステムの開発を進めていると話します。

失敗から学びを得る“学びの文化”を重視した人材育成

調達部門が環境変化に対応していくためには、人材育成が基本だと石橋氏。この点について内山氏は、想定されたあらゆるケースへの対応を体系化して、誰がやっても同じようなアプローチでベンダーと交渉し、長期的な関係性を構築できるような手法をとっていると説明します。

「Amazonはポストモータム(事後検証)を大切にしている会社です。失敗から学んだことを体系化のメカニズムに落とし込み、次の失敗を回避する。社員にも実務的な経験をさせ、場合によっては失敗させてそこから学びを得るというサイクルで人材育成しています」として、セッションを締めくくりました。

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