本記事は「ネットワーク最適化におけるサプライチェーンモデリング」を元に作成した記事です。
コスト削減に注力するあまり、サービスのモデル化が後回しになりがちです。しかし、eコマースの発展と「ジャストインタイム」消費(必要な物を、必要な時に、必要な量だけ供給するシステム)に対する欲求の高まりによって、小売業界におけるサービスの重要性が増し、他の業界にも影響しています。
サービスをネットワーク設計の一部として考えるかどうかは、運用の観点から設備の配置、モードミックス、在庫管理の最適化に影響し、財務の観点からは、収益、営業費用、資本支出、運転資本に影響を与える可能性があります。もしも、まだサービスをモデルに組み込んでいないのであれば、今すぐ実行に移すべきでしょう。
ネットワーク最適化におけるサービスの定義
サービスに関するビジネス上の疑問にモデルを用いて適切に答えるには、まず、サービスを定義することが重要です。それは、以下2つの質問から導き出されます。
- サービスの適切な測定方法は何か
- サービスは目的か、あるいは制約か?
ネットワーク最適化において、サービスには距離と時間という2つの基本的な測定方法があります。特に、LTLとFTL、あるいは地上便と航空便のように、同じ発着地を異なる輸送時間で結ぶ複数の輸送形態がある場合、距離よりも時間をベースに輸送経路を考慮すべきです。
もちろん、中継時間を使用する場合は、モデルデータが正確であることを確認する必要があります。日数指定の輸送時間であれば、簡単に一括データ入力することもできますが、他のモードやサービスレベルでは、より具体的な輸送時間を入力する必要があります。
サービスを”目的”または制約条件としてモデル化するかどうかは、ビジネス上の疑問に対する適切な答えを導き出すための鍵となります。分析する目的をよく理解し、それをモデルに反映させることが重要です。
例えば、サービスをモデル化する理由は「外的要因」(例:顧客の要求や競争圧力)なのか、それともより本質的で探索的な要因なのか(例:サービス向上のためのコストを理解する)、前者の場合だとサービスは「要件」または制約とみなすことができ、後者の場合、サービスは目的でとなります。複数のアプローチが存在する場合も、同じモデルで容易に検証は可能です。
制約条件としてのサービス
サービスを制約条件として表す場合、ビジネス上の疑問に回答できるようになります。
- 設備数とソーシングの割り当て
「サービス要件を満たすために、拠点の追加や、顧客のソーシング先を変更する必要はあるのか?」 - モードミックス/モード代替
「サービス要件を変更した場合、普通便と翌日配達を組み合わせるべきでしょうか?」 - 上記の両方を同時に行う場合
「追加施設のコストとエクスプレス輸送のコストでは、どちらを選択するのが最適なのか?」
つまり、サービスレベルを制約条件として使用すると、そのサービスレベルを満たすような解決策(例えば、割高コストでの迅速な輸送手段や、近くに施設を立ち上げて運用するなど)で対応するようモデルを強制することになります。
さらに、サービスレベルの制約を緩和して(例えば、2日以内に需要の80%のみを満たす)、どの顧客が地理的に特例なのか理解し、需要の要件を緩和して(サービス制約が達成できない場合、満たされない需要を許容する)収益への影響を理解することで、さらに深い知見を得ることができるようになります。
目的としてのサービス
明確な顧客要求や競争力のあるベンチマークがない場合、適切なサービス目標を設定するのは難しい場合があります。
サービスを向上させるためのコストはいくらなのか?
そしてそのコストはどのようなケースだと「高額」になるのか?
このような場合、コストに対するサービスの可視化は、意思決定のために大変有効なツールとなります。単一の解決策を提示するのではなく、関係者の意思決定を納得できる結果に導くために、トレードオフ曲線を表示することが有効と言えます。
以下の図では、総コストと総需要が2日以内に充足される割合の関係を見ることができます。これは明らかに非線形の関係を示しています。このような分析的見解と企業全体のビジネス戦略を組み合わせることは、設計上の意思決定を行う上で非常に重要です。
サービスに関するビジネス上の明示的または暗黙的な問いに答えるには、従来のコストや利益目標と同じように意図的かつ厳密にアプローチすることが重要です。
さらに,サービスに関する意思決定をコスト重視のモデルに組み込むことで,トップラインとボトムラインに同様の影響を与え、より強力な「現実的」ソリューションを特定できます。モデリングのプロセスは簡単ですが、サービスの定義とその動機について組織に問いかけることが、意味ある見解を導き出す鍵になります。
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