NRIグループも調達改革の要としてCoupaを導入
「NRIでは、外部環境への変化やグループ全体での業務効率化、適切なガバナンスとサプライヤーマネジメントなど、多数の課題を抱えていました」と川上氏。
DXビジネスの進展やサプライヤーとの関係強化、カントリーリスクの発生、コロナ禍に伴うワークスタイルの変化といった社外環境の変化だけでなく、購買領域ごとにシステムが異なることによる弊害が発生するなど、抜本的な対策が必要でした。
これらの課題を一挙に解消すべく、調達業務改革の基盤としてグループ全体でCoupaを導入。調達業務改革では、業務委託のオペレーションにCoupaを導入後、物品購買やサービス購買へと横展開する方針に決まりました。
標準機能を基軸にした業務運用の整理が重要
Coupa導入にあたって苦労した点は大きく2つあります。1つは、標準機能で実現できない要件への対応です。
業務委託のビジネスパートナーへの発注では、パートナーの工数を見積として月別・単価別の2軸での出力を求めていました。しかし、Coupaの標準機能には2軸で回答できる機能がありません。
そのためNRIでは、Coupa外に購買申請を作成しExcelで回答された見積を、Coupaに登録するオペレーションを採用。「Coupa内外のデータの整合性を取る必要があり苦労しました」と川上氏は話します。
もう1つの課題は、Custom Fieldの項目追加の上限到達への対応です。横展開する予定がありながら、次の領域に広げる際に項目追加の上限に到達。その後、主幹部署から項目追加の要望があり、業務調整が必要になりました。そのためNRIでは項目の断捨離を実施し、社内のチェンジマネジメントに取り組みました。
川上氏は教訓として、Coupaの標準機能を使い倒すことが重要だと指摘します。
「“Fit to Standard”の徹底が重要です。グローバルで実績のあるツールなので、Coupaの標準機能をベースにした業務や運用の整理が成功への鍵となります」
社内ユーザーの利用率向上を手助けする操作支援ツール
Coupaの導入効果を高めるには、社内やサプライヤーの利用率を上げることが欠かせません。田畑氏は「ユーザー利用率の向上にはソリューションミックスが有効だ」と話します。
ソリューションミックスとは、NRIが提唱する「Coupaを含む複数のソリューションを組み合わせることでCoupaの導入効果を高める」という考え方。先述のような標準機能だけではユーザーの意向にフィットしないケースも発生します。
社内ユーザーへの取り組みとしては、ログイン状況のモニタリングや、利用頻度の高いコアユーザーを早期から巻き込むなどの施策が重要です。一方、利用頻度の低いユーザーに対して利用を促すツールとして、ユーザー操作支援ソリューションが効果的です。
Coupaの画面上に埋め込む形で操作ガイドを表示させることで、利用頻度の低いユーザーが操作に迷う場面の発生を防ぎ、離脱防止につながります。
導入タスクの半自動化とAI-OCRで、サプライヤーの利用率向上へ
一方サプライヤーの中には、新しいソリューションを使うことへの抵抗感があるユーザーも少なからず存在します。こうした場合、「丁寧な説明に努めることに加え、サプライヤーに利用してもらうために発生する手続きやタスクを半自動化することが有効です」と田畑氏。
導入初期は多数のサプライヤーへ同時にシステムを接続するため、担当者の業務負荷が発生します。そのため、このプロセスにタスク管理のソリューションを導入することで手続きを半自動化でき、担当者の工数削減に寄与できます。
また、なかにはCoupaを利用せず、紙やPDFで各種証憑を発行するサプライヤーも存在します。ここで発生する業務運用の負荷に対しては、AI-OCRソリューションが活用できます。紙やPDFの請求書をスキャンし内容を読み込むことで、Coupaに自動登録できるため工数削減を実現。Coupaで取引を管理することで、分析を容易にするほか、電子帳簿保存法に対応した保管が可能です。
グローバルロールアウトの効果が大きい調達領域
グローバルロールアウトすべき業務領域が多数存在する中、調達や物流、サプライチェーンは、規模の経済が働くコスト削減領域に位置づけられます。
「業務改革によるオペレーションの削減や集中購買による原材料調達コストの削減などは、他社との差別化を図りやすいため、グローバルロールアウトによる効果が大きい」と市田氏は話します。
一方で、グローバルロールアウトの実施には課題もあります。本社と現地法人との間に距離感があり、既存のオペレーションで多忙な中、新たなオペレーションへの移行は一筋縄では行きません。
市田氏は「計画準備段階での合意形成や巻き込みが不十分であるケースが多く見受けられます。システム開発での上流工程の重要性と似た事象で、計画準備段階ですでに崩壊が起きていることが考えられます」と指摘します。
現地法人の規模に合わせたアプローチが必須
グローバルロールアウトに際しては、現地法人の規模に合わせたアプローチが必要です。中小規模のSME型の場合は、IT人材や機能、予算などが不足していることが多いため、テンプレートの準備や現場に負担をかけないプロジェクト体制の構築が求められます。
M&A型の場合は、カルチャーギャップが大きく本社から統制を効かせることが難しいため、外部の動画や記事といったパッケージのベストプラクティスを活用することが推進の足がかりとなります。
大規模拠点型の場合は、成熟したIT運営体制があり、個別最適を超える全体最適を提案できない場合は、あえてロールアウトの対象から外すことも現実的な選択肢です。一方で、本社の意向を実現するための取り組みにはしっかりと協力を依頼することが求められます。
ユーザーとして活用しながら、パートナーとして導入支援するNRI。その2つの側面から得られた教訓は、Coupa導入の効果を最大化させるために重要なものといえるでしょう。今回の事例を参考に、ぜひ自社のCoupa活用を見直してみてはいかがでしょうか。