小ロット、低価格のロングテール商材が抱える問題

最初に平佐氏は、間接材に特有の3つの問題点を指摘します。

問題点1:現場の多大な手間が必要
企業の購買品を金額の高いものから順に並べてグラフにすると、金額の低い品目が長く連なる形状になります。このロングテールと呼ばれる部分の商材が購買品目全体に占める割合は、金額でみると20%程度にすぎません。ところが品目では80%を占めるため、金額が低いにもかかわらず購買の手間は80%必要になります。
 

間接材改革の成功要因とは?MonotaROが提案する購買DX

問題点2:購入しづらい特性
ロングテール商材には、リピート購入が少ない、商品マスタの整備が難しい、小ロット購入のため価格交渉に適さないといった多岐にわたる購入しづらい特性があり、調達のプロが存在しません。また、ロット購入により不要な在庫を抱えてしまうことや、手作業の手続きが多いこと、支出が可視化されないなどの問題があります。

問題点3:全国の拠点に存在
全国展開の企業では各拠点でMRO(メンテナンス、リベア、オペレーション)の間接材が必要になるため、拠点ごとにサプライヤーとの取引やホームセンターへの買い出しといった作業が発生。全国で同一のサービスが受けられず、価格の妥当性がないという問題があります。また、煩雑なプロセスが多く、各拠点で属人化が進み購入方法がブラックボックス化してしまいます。
 

間接材の購買DXに存在する難しさ

このような問題を解決するため、購買DXにどう取り組んでいけばよいのでしょうか。平佐氏は「購買DXには、ROI(投資対効果)や効果証明の難しさがある」と言います。

ロングテール商材については、何十万とある購買データが未分類であったり、購買データの記述が不十分で購買内容が特定できなかったりする場合が少なくありません。支出が可視化されていないので、プロセスコストの削減を定義しても効果を証明するのが難しいのです。「可視化できていないから効果証明ができないのか、効果証明ができないからDX化に着手できないのかが悩ましいところ」だと平佐氏は話します。

またコンプライアンスの問題もあります。コンプライアンスにまつわる失敗のケースとして平佐氏は、現場任せの購買フローが行われていた例、プロジェクトが各部門から反発を受けて頓挫した例、運用開始後にシステム通過率が向上しなかった例を挙げました。

これらの失敗の主な原因は、「サプライヤーマネジメント及びユーザーマネジメントが不十分であること」だと平佐氏は指摘。特にユーザーマネジメントについて、次の3つのコンプライアンスを強化するための要素を解説しました。

①プロセスのコンプライアンス:購買部が作った原則に基づく購買方法で間接材が購入されているか
→違反者に対する再発防止徹底のほか、調達プロセスの規定が重要

②システムのコンプライアンス:指定されたシステムを使って物品・サービスが支払われているか
→調達の担当範囲を定め、それに見合った購買システムを構築

③サプライヤーのコンプライアンス:調達部が選定した主要取引先、指定取引先に集約されているか
→購入に要したプロセスコスト削減の検討や、損益分岐ラインの明確化
 

間接材改革の成功要因とは?MonotaROが提案する購買DX

購買戦略DXの概要

効果証明やコンプライアンスのような難しさを踏まえ、購買DXに必要になるのが膨大な数にのぼる外部調達品目の分類です。1千億円規模の製造業なら明細が2万行から3万行、1兆円規模の製造業なら30万行を超えることもあるため、DX化によるデータ整理が不可欠です。

間接材改革の成功要因とは?MonotaROが提案する購買DX

また、ロングテールの購買は次の3つに分類されます。

①スポット発注:都度見積、都度購入とも呼ばれる。地場サプライヤーやホームセンターでの購買
②立替購入:ホームセンターやECサイトで立替精算して購買
③パンチアウトカタログ:企業のシステムと連携されたECサイトでの購買

スポット発注と立替購入はどちらも社内工数が大きく手間がかかりますが、金額が小さいためにコスト低減効果は大きくありません。また上記のようなコンプライアンスリスクもあります。これに対し、パンチアウトカタログは、サプライヤーのECサイトと連携したシステムで購買するため工数が小さく、コンプライアンスリスクもありません。

したがって、「ロングテールのような少額・小ロットの購入品はパンチアウトカタログに集約するのがベストで、それにより購買戦略領域の拡大や購買データの蓄積といった効果が得られます」と平佐氏は強調します。

 

経営層の巻き込みで全社的な購買DXを推進

続いて平佐氏は購買DXの事例として、従業員数36,000名、9工場を持つ製造業企業が、購買機能を拡大させることで工場別に購入していた間接材を統括した取り組みを紹介。

購買DXのための最初の取り組みがデータ化です。ポイントは「経営層の巻き込み」であると平佐氏。購買DXは全国の拠点で行われるため、全社プロジェクトとして推進することが必要です。

まずモデル工場で試験的にスタートし、モデル工場での成功事例を全工場に展開して、購買システム利用率の向上、購買履歴のデータ化、購買フローのIT化といった成果が得られました。

データ化が完了したあとは、購買データを活用したコストダウンのための3ステップ ①コストレベリング、②ボリュームディスカウント、③商品の仕様統一 を実行しました。
 

間接材改革の成功要因とは?MonotaROが提案する購買DX

最後に平佐氏は、MonotaROが可能な購買DXへの貢献として、①2,300万点からなるBtoB向け間接材の商品ラインナップ、②購買データ分析に基づいたソリューションの提案、③プライベートブランド採用による間接材のコストダウン、④SDGsへの取り組み を挙げ、セッションを締めくくりました。