間接材調達ガバナンスとは目を行き届かせること
最初に今野氏は「間接材調達におけるガバナンスとは何か」について確認。調達業務の効率化のためには、経営機能の一部である調達の権限を調達部門や発注部門に付与する必要がありますが、そこにはコンプライアンス違反や不正のリスクが生じます。こうしたリスクを防ぐために、しっかり目が行き届いた状態を作ることが「ガバナンス」です。
また、間接材調達ガバナンスに取り組む目的は、コストの適正化とコンプライアンスであると解説します。
「間接材調達ガバナンスの強化にはまず管理が必要で、管理するためには効率的な運営が不可欠。この管理と効率運営の継続により、ガバナンス強化の良い循環が生まれる」と今野氏は続けました。
グローバル先進企業における間接材調達の現況
HIPUSでの購買調達の経験を踏まえ、今野氏はグローバル先進企業の取り組みを紹介。調達業務が増加する状況下で戦略的に価値を創出するために、グローバル先進企業では、従来型の調達業務からの調達改革が加速しています。
調達改革のトレンドは、ハイバリューシフトと、それを下支えするアウトソーシングとのこと。すなわち、自社リソースには限りがあるため、一部の業務を外部の専門業者に任せることにより捻出されたリソースを、付加価値を生む戦略的な活動や、新たな調達施策の推進にシフトするというものです。
「多くのグローバル先進企業は、アウトソーシングをうまく活用し、内部リソースの強化を図っています」と今野氏は話します。
では、どのような業務がアウトソーシングされているのでしょうか。
間接材調達のP2P業務ではBPO化・自動化が進んでいます。P2P業務はリソースの割り当てを見直しやすいため、効率化のポテンシャルが高い領域だからです。
一方で、「S2C業務のPO化・自動化は一部にとどまっています」と今野氏。これは、P2P業務の上流にあるS2C業務は分析や戦略が必要な専門業務であるためです。
グローバル先進企業の調達システムでは、S2CからP2Pまで標準化されており、S2CとP2P間を連携したプロセスの構築が主流です。これに対して日本では、「上流の業務には手作業が残っていたり、システムも非効率なつくりや状態であったり課題が多いのが現状」であると今野氏は指摘します。
国内企業における間接材調達の課題
間接材調達は品目数が多く、要求部門も多岐に渡る上、責任部署も曖昧であるなどガバナンスが機能しにくい特徴があります。そのため、コストの最適化やコンプライアンスの強化に取り組んでも、その効果は限定的になってしまう懸念があります。
また多くの調達部門が、パーチェシング業務の負荷や企画管理業務の増加で手一杯である現状を今野氏は指摘。そこから、付加価値の高いソーシング業務や戦略的な業務へとリソースシフトを図ることが日本企業の課題だといいます。
このような課題を正しく認識するためには、日本企業が抱える構造的な問題を理解しなければなりません。欧米企業では業務の標準化や区分けが明確であることから、BPO・DXが進んでいます。それに対して日本では、若年層リソースの減少や、人から人へのノウハウ継承が中心といった固有の問題により、業務の標準化や区分けが不明確である結果、BPOやDXが進んでいません。
今野氏は、労働人口減少に起因する固有の問題を抱える日本企業へのアプローチ例を、以下3つのステップで紹介。
ステップ1:専門業務と共通業務の切り分け
ステップ2:専門業務への人員配置と教育
ステップ3:共通業務の徹底的な効率化
各ステップに対するHIPUSの支援例として、①調達アセスメント ②調達教育 ③調達BPOやDX推進 を挙げました。
CoupaシステムとHIPUSのオペレーションでガバナンスを強化
間接材調達ガバナンスの強化をサポートするソリューションとして、Coupaのシステムを高く評価すると今野氏。HIPUSがCoupaを推奨する理由は以下2つだといいます。
①Coupaのシステムが間接材調達システムに求められる要件をカバーできていること
②ほかのシステムと比べてベンチマーク評価が高かったこと
間接材調達ガバナンスの強化に必要なのは、システムカバレッジと品目カバレッジの掛け合わせです。まずシステムカバレッジについて、CoupaはEnd to Endで間接材調達業務をサポートしています。さらに品目カバレッジについても、コストの最適化につながる品目の適切な分類と階層管理が可能です。
続いて、今野氏はHIPUSのCoupaサービス事例を紹介しました。
CoupaサービスにおけるHIPUSの強みは、システム導入から展開・運用、及びオペレーションサービスまでEnd to Endで対応可能であることだと強調。実例として、間接材集中購買体制をモデル化した運用事例が挙げられました。
この事例でHIPUSは、Coupaを活用したオペレーションを実施。その結果、業務の負担が軽減し、リソースに余裕が生まれて分析や戦略への注力が可能になりました。またCoupaの利用で間接材集中購買が推進され、コストの低下、及びコンプライアンスの向上に成功しました。
このコンプライアンス向上に効果を発揮するのが、Coupaの新機能「Spend Guard」です。
AIや機械学習を活用して、Coupa内の支出を自動的に分析し、疑わしいトランザクションをリアルタイムで検出。継続的な監査により、Spend Guardも学習を重ねてレベルアップします。「Coupaの導入とHIPUSのオペレーション業務が相乗効果を生み、間接材調達ガバナンスを継続的に高めていく」と今野氏は強調しました。
最後に今野氏は「コスト削減効果を創出可能な調達部門だからこそ、間接材調達BPOのコストは回収の期待できる投資になる」と主張。BPOとコスト削減の組み合わせを提案して、セッションを締めくくりました。