EPC事業のありたい姿から逆算してロードマップを策定
小関 日揮グローバル株式会社様はCoupaのユーザー企業様です。本日は、経営の視点から、どのような戦略を持ってDXに取り組んでいらっしゃるのかについてお話をうかがいます。よろしくお願いいたします。
阪本 日揮ホールディングスは、総合エンジニアリング事業と機能材製造事業の2つの事業セグメントを持つ5社を中心とした企業グループです。海外のエンジニアリング事業を日揮グローバル株式会社、日本国内を日揮株式会社がそれぞれ携わっています。
主軸は総合エンジニアリング事業で、LNGの製造設備を軸に、昨今は低炭素で話題になっているCCSや、太陽光やバイオマスなどの再生エネルギー、最近は持続可能な航空燃料(SAF)などを中心に幅広い分野に携わらせていただいています。
小関 ありがとうございます。その中でDXに力を入れられている背景や、目指している方向性についてお聞かせください。
阪本 私たちは2018年に「ITグランドプラン2030」というロードマップを策定しました。
小関 御社は歴史が長く、確固たるビジネス基盤があると思いますが、このタイミングで「ITグランドプラン2030」を策定された背景、理由、目的をお聞かせください。
阪本 弊社は100年近くの歴史があり、先進的にビジネスに取り組んできたという自負があります。しかし、様々なプロジェクトに特化した形でシステムが導入されており、システムが統一されていないという課題があり、実際に「レガシーシステム」と呼ばれるような状態になっているという現実も受け止めています。
また、2017年に弊社社長がアメリカの主要顧客を訪れた際に、「これからデジタルの進化についていけない会社はダイナソー(恐竜)になる」と言われたそうです。このままでは組織が滅びてしまうという危機感もあり、ロードマップを策定することになりました。
具体的な目標は「従業員の労力を3分の1、スピードを2倍にして、2030年までに実現すること」。今の現実から逆算して考えると、求められている内容は非常に高い目標です。細かい改善の繰り返しではなかなか実現には至らないということもあり、将来のEPC事業のありたい姿や遂行のあり方からバックキャストしてロードマップを作成しました。
現在、開発や実装が随時進んでいますが、これからさらにギアを上げて取り組まなればいけないと考えています。
2023年は日揮グループの「デジタル元年」
小関 御社の重点戦略になっているEPC事業をさらに進化させるために、デジタルをどのように活用していこうと考えられていますか。
阪本 今年2023年は日揮グループの「デジタル元年」と捉えています。
EPCのE(Engineering) である設計に関しては、データ中心のエンジニアリング遂行を実現するべく、順次取り組み、着実に成果を上げていっています。P(Procurement)の購買に関しては、弊社の調達DXグループがCoupaを活用しながら調達業務の大改革に挑んでいます。調達に関しては、私たちがプロジェクトの最前線で扱うシステムだけでなく、会計システムなどのバックオフィス系システムとの統合が大きなポイントになってくると考えています。
これらが成し遂げられ、EngineeringとProcurementのデータが最終ランナーであるC(Construction)にシームレスにつながっていくことを目指しています。これらの実現によって、プロジェクトをデジタルで一貫してつなぐことができるように、その起点となるチャレンジの1年になると期待しています。
多くの情報をデータ化し、ナレッジとして活用していきたい
小関 EPCをデジタルで一気通貫させる御社のプロジェクトの中で、Coupaが非常に大事な役割を担わせていただいていると改めて実感いたしました。
阪本 昨年、外部の協力を得て、2030年以降のDXでの変革ビジョンを構築するためのワークショップを開催しました。その結果をビジョンブックとしてまとめ、社内に周知する取り組みも行いました。
以前はスーパーマンのようなプロジェクトマネージャーが主導するケースが少なからずありましたが、昨今はLNGを中心としてプロジェクトが巨大化しており、プロジェクトをプロマネ一人でハンドリングすることは到底難しく、多くの人々の協力が必要です。そのため、多くの情報をスムーズに扱い、データを資源として活用し、ナレッジとして展開していくことを実現していきたいと考えています。
私たち日揮グループは人が財産です。テクノロジーと人は切っても切り離せない関係だと思っているので、従業員が実力や能力を発揮するためにはデジタルの力が必要だと考えています。山あり谷ありの道のりかもしれませんが、粘り強く挑戦し、乗り越えていきたいと思います。
小関 デジタルと人というアナログをつなぎ合わせてドライブするものが、御社の企業理念やパーパスになってくるのでしょうか。
阪本 私たちはパーパスとして「Enhancing planetary health」を掲げています。大きなテーマなので、これを各部門で「パーパスをどのように解釈して、仕事に生かすか」を日々検討して、現場に落とし込んでもらっています。
小関 先ほど仰っていた「従業員の労力を3分の1、スピードを2倍」というオーダーはトップダウンで下りてきて、それを現場の皆さんがどう実現していくかというHowの部分は、パーパスの下にボトムアップ型で取り組まれているということを理解しました。
阪本様、貴重なお話をありがとうございました。