経済価値と社会的価値をつなぐものがパーパス

冒頭、イベントのテーマでもある「パーパス×サステナブル経営を加速するBSM」にちなみ、小関は「『パフォーマンス(経済価値)の最大化』と『社会的価値の追求』を両立させることがサステナブル経営において重要です」と主張します。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

ここでポイントになってくるのは、社会的価値を追求しつつ、コストやリスクを抑えながらビジネスを伸ばしていくことです。以前は経済価値が最優先され、そこから得た利益をCSRなどを通じて社会に還元していくことが主流でしたが、今は両方を同時に実現しなければなりません。

「サステナブル経営はトレンドではなく、これからの成長戦略」と訴える小関。企業を取り巻く「消費者の行動」「働くモチベーションの源泉」「ステークホルダーからの要求」「法規制」などの環境が、サステナビリティやESGをさらに加速させています。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

「『経済価値の最大化』と 『社会的価値の最大化』をつなぎ合わせ、社内や社会をドライブするものがパーパスである」と小関は強調。購買調達やサプライチェーンの改革には、必ず社内の異なる組織が横断的に連携していく必要が出てきますが、連携を促すドライバーになるのもまたパーパスです。

「パーパスだけでは実現できないのも事実で、従業員の働き方や仕事の効率性・生産性を高める“科学的な経営”を進めていくためにはテクノロジーが必要不可欠です」と小関。パーパスの下にテクノロジーと人がどのように集結してゴールに向かっていけるかが鍵になります。

BSMの根底にあるのは「支出の価値最大化」

Coupaは、クラウド型Business Spend Management(BSM)プラットフォームを提供しており、このBSMとは「企業のあらゆる支出に関わるデータを管理・適正化する一連のプロセス」のことを指します。

BSMの根本には「支出(投資)の価値最大化」があると小関は主張します。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

「コストカットだけでは企業のトランスフォーメーションは起こせません。私たちのBSMプラットフォームは、支出や業務を統合し、改善し、ビジネスゴールを達成するためのツールです。そして、このプロセスを通じて社会的価値の実現にも寄与します」と小関はセッションを締めくくりました。

ユーザー体験向上のための3つの戦略

続いて、Coupaのプロダクトマネジメントを担当するFang Changは、Coupaが調達購買、サプライチェーン領域のデジタル変革にどのように貢献できるのかについて紹介。

かつては支出を統制するために多くの企業がシステムを無理やり連携させてきましたが、その結果、ユーザー体験はいびつなものとなり、支出管理は散々なものになってしまいました。

そこで、「Coupaは一歩引いて、明確な戦略を定義するところから始めました」とFang。その結果、今ではシームレスに何百ものサードパーティアプリケーションをつなぐことでユーザーの一元管理を可能にし、2022年以降、350を超える新機能を開発・リリースしています。

では一体、Coupaが描いた戦略とは何なのか。それは「『支出の可視化』 『プロセスの統制・最適化』 『コミュニティによる価値の最大化、改善』の3つ」だとFangは話します。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

システムの利便性を向上し、全ての支出を可視化する

一つ目の戦略は、「全ての支出を可視化する」ことです。

Coupaでは、ITハードウェアやソフトウェアなどの間接材支出、さらに原材料や医薬品、再販用の物品などの直接材支出をカバーしています。

創業当初からCoupaはユーザー中心主義にこだわってきました。その理由を「全ての支出を可視化するためには、従業員やサプライヤーの皆さんが進んでシステムを使うようでなくてはいけないからです」とFang。これにより、ユーザー企業と共に高い導入定着レベルを誇るイノベーションを生み出してきました。

以下3つの新機能をFangは紹介します。

  1. ガイド付き購買体験
    ユーザーに質問を投げかけながらニーズに合わせた申請フォームなどへ案内するガイド機能を活用することで、多くの従業員がより簡単にCoupaを使い始めることができます。必要なものをすぐに見つけられ、Coupaの利用が促進されることで、より多くの支出を管理できるようになります。
  2. リクエストの同時処理
    ワークフローにおいて、従業員からのリクエストをチームが同時並行で処理できるように変更。これにより、リクエスト内容の迅速な処理がさらにしやすくなりました。
  3. グループ購入
    グループカート機能の追加により、チーム単位で購入可能に。バーコードリーダーなどの新機能を使って買い物ができます。これにより、過剰な購入を減らしてコストを節約し、混載してまとめて配送することで、CO2の排出量の削減にもつながります。また、「チーム全体で全ての支出を可視化できます」とFang。

 

Coupa Software Inc. Fang Chang
Coupa Software Inc. Fang Chang

サイロ化されたシステムのプロセス最適化

2つ目の戦略は、「スイートシナジーによる周辺プロセスの最適化」です。スイートシナジーとは、サイロ化された構造を打ち砕くもの。

Fangは、「サプライヤー管理の効率化」「リスクの軽減」「業務プロセスの最適化」を可能にする、以下3つのCoupaの機能を紹介します。

1、コミュニティーデータコンポーネント
「私たちの業界ではサプライヤーの最新情報を追いかけ続けなくてはならないのが共通課題」とFang。そこで、サプライヤー管理の効率化として、2023年初頭にロールアウトしたのがコミュニティーデータコンポーネントです。例えば、サプライヤーが入札すると、そのときに入力したデータが左側に表示され、右側にはCoupaコミュニテイ上で共有されているプロフィールが表示され、その違いが分かります。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革
  1. リスクのスコアリングと追加レビュー
    「もう一つの業界課題として、支払いプロセスのばらつきにより、リスクが検知されても取引が実行されてしまうことがあります」とFang。リスク軽減を図るため、購買申請、請求処理、支払い、調達、契約全てにわたって継続的にリスクをモニタリングし、リスクが見つかれば追加のレビューを通すことができる機能を開発。「サードパーティリスク評価を通じてリスクが細かい粒度でスコアリングされることで、リスクが検出されたら支出される前に食い止めることができ、自社のブランドと利益が守られます」とFangは説明します。

  1. 調達プロセスの分析
    Coupaを使うことによって、Source-to-Pay調達から支払いまでのプロセス全体を最適化できます。例えば、コミュニティデータを活用することで、他社のプロセスと比較・分析した上での改善策が提案され、自社のボトルネックが明らかになります。

630兆円を超えるコミュニティデータを基にソリューション開発へ

3つ目の戦略は、「『Community.ai』というコミュニティを活用した価値の最大化、改善」です。

現在のコミュニティデータは累積取引額で630兆円を超え、さらにCoupa上で取引するサプライヤーの数も950万社を超えています。「取引額が1円増えるごとに、登録サプライヤーが1社増えるごとに、Community.aiは賢くなります」とFang。この圧倒的な数こそが、Community.aiの価値を高めています。

Coupaは2022年に「価格インテリジェンス」を導入。1万点を超える項目ごとにCommunity.aiが価格インサイトを提供できるようになっており、その数はさらに増え続けています。また、海上貨物輸送の価格インサイトを使うことによって、よりスマートな交渉ができ、輸送コストが天井知らずになることを避けられます。

さらに、価格インテリジェンスの機能を拡張することによって、貸切便、フルトラックロードのインサイトが得られるようになりました。ルートを選ぶと、リアルタイムでプラットフォーム上の実際の支出データから得られた価格インテリジェンスを提供します。「来年にかけて、直接材や航空輸送費などさらに新しいカテゴリーを追加していく予定」とFang。

今後は「支出計画のソリューション開発」を提供予定で、Coupaであらゆる支出の策定と可視化ができるようになります。例えば、プロフェッショナルサービスのようなカテゴリーを深掘りしようとするときに、プラットフォーム全体から自動的に抽出されたカテゴリーインサイトと計画、そしてCommunity.aiによる改善策が表示されます。これにより、例えば「なぜ他社よりも支出額が高いのか?」といった様々なシナリオが検証しやすくなります。

また、Coupaでは自然言語処理によって質問に回答するという新しい機能も開発中。例えば、「ITコンサルティングサービスで取引すべき企業トップ5を表形式で教えて」と尋ねたりできます。

「Coupaは生成AIとは違い、コミュニティデータという匿名化された支出ビッグデータを保有しています。一般公開データによる結果と、Coupa独自のコミュニティデータによる粒度の細かい評価の仕方を示すことで、カテゴリーマネージャーはよりスマートな意思決定が可能になります」とFangは強調します。

直接材調達の未来を変えるコラボレーション機能

Coupaでは、2022年に「サプライチェーンコラボレーション」の早期アクセスプログラムを発表しました。これは、注文作成におけるシステムが使いづらいことにより、電話やEメールなどの連絡手段が増え、結果的に工場の計画外ダウンタイムなどが生じているという課題に対応するためのものです。

さらに、POや発注書のコラボレーション処理も利用可能になりました。項目レベルのオーダー変更に関するコラボレーションを容易にし、工場や病院、小売店の稼働を維持することに貢献しました。

「今後は、予測や在庫、品質機能において、コラボレーションの開発に取り組んでいきます」とFang。予測機能を通じて、現在の注文のコラボレーションだけでなく、将来予測される需要についてもサプライヤーとコラボレーションできるようになります。また、品質機能では、お客様が求める品質で部品が生産されていることを保証するための機能を追加します。

「これら3つのコラボレーションが直接材調達の未来を変えていきます」とFangは力強く話します。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

コミュニティの力をフルに発揮し、お客様のESGをサポート

Coupaはこれまでプラットフォーム全体で100を超えるESG機能を開発してきました。Fangは、Community.aiが企業のESGゴールの達成にどのように貢献できるかを紹介します。

E(環境)
「サプライチェーンネットワークの最適化」と「CO2削減」に貢献できます。

Coupaは2022年に「Scope3」のカテゴリーに入るサプライヤーから排出された間接的な排出量の追跡機能を発表。しかし、Scope3の重要な要因の一つである「出張」についての機能がなかったため、2023年に出張予約におけるScope3排出量を追跡し、他社と比較してインサイトを得られる機能を追加しました。現在、CO2排出量を可視化してレポートすることは実現できていますが、真の目標はCO2排出量の削減。「今後のリリースでは、ユーザーが予約を検討している全てのフライトのCO2排出量を確認できるようにしたい」とFangは話します。

S(社会)
「社会的インパクト」と 「ダイバーシティ管理」に貢献できます。

10年前まではサプライヤーの合理化が全てでしたが、潮流を読み、多様性のあるサプライヤーを考慮に入れるよう考え方を変えています。「世界中のサプライヤーと協力し、企業の多様性証明書を収集し、データソースにつなぎ、皆さんが多様性支出を報告できるようにしました」とFang。Coupaの豊富なコミュニティデータを活用することで、企業は多様性に関する支出を増やすための行動を起こすことができ、より多くのビジネスチャンスにつなげることができます。

G(ガバナンス)
「サードパーティリスクの低減」に貢献できます。

現代社会では、サプライヤーからパートナーに至るまで適切なサプライチェーンを構築することが重要視されており、Coupaではサードパーティリスクの管理を行うことが可能です。

さらに、ESG規制にも対応。例えば、日本では2050年までにカーボンニュートラルの実現が目標にされていますが、「Coupaでは継続的にリスクを監視し可視化しているため、世界のあらゆる場所で分刻みに意思決定がなされても、リスクチームはリスクをコントロールできます」とFangは話します。

パーパス×サステナブル経営を加速するBSMがもたらす、企業のデジタル変革

最後に「『サステナブルBSM』はコミュニティの力をフルに発揮し、環境、社会、カバナンスまでお客様をサポートします」とFang。

「BSMコミュニティは単なるデータではなく、共に大きなインパクトを生み出し、意味のある変化を起こしています。コミュニティの価値を最大化するというビジョンに取り組むことで未来はより明るいものになるでしょう」と力強く提言し、セッションを終了しました。