サプライチェーンデザインにより「データ分析」「ネットワーク最適化」「輸送最適化」「在庫最適化」を実現

同社は総合物流企業として、顧客の多様な物流ニーズに対し豊富なリソース、現場・改善力を強みに幅広く事業を展開。顧客の物流業務を包括的に受託・遂行を担う3PL(サードパーティロジスティクス)のリーディングカンパニーです

本セッションでは、物流業界の課題がサプライチェーン全体に広がっている状況を鑑み、同社のDX実行力と現場で培ってきた知見を活かしたDXソリューション「SCDOS(エスシードス)」を紹介。そのサービスメニューの1つ、「サプライチェーンデザイン(以下SCD)」にフォーカスし、具体的な導入事例、SCDにおけるCoupaソリューションの活用、その有効性も含めお話しいただきました。

 

「SCDOS」とは「Supply Chain Design&Optimization Services」に由来。「サプライチェーン上でバラバラに管理されていたデータをデジタル技術で集約し、当社オペレーションノウハウにより、サプライチェーンのデザインと高度化を支援するサービスです」と天春氏。

サービス範囲は倉庫モニタリングサービス、海外代理店支援など調達、生産、供給、販売とサプライチェーン全般に及びますが、SCDサービスでは、長年、顧客から寄せられる課題を分類し、「データ分析」「ネットワーク最適化」「輸送最適化」「在庫最適化」の4つのメニューを展開(下図参照)。

ツールには自社開発ツール「SLC」と「Coupa SCD&P」を使い、「豊富な経験と物流事業で蓄積した情報を活かし、既に130案件を超える多種多様なプロジェクトを手掛けています。」(天春氏)

コロナ禍によるECシフトで急増した物流コストの最適化プランを提唱

続いて、Coupa「SCD&P」を活用したネットワーク最適化プロジェクトの事例を2社紹介いただきました。※

1社目は同社が3PLサービスを展開している既存顧客に対し、SCD&Pを適用した事例です。

世界的なスポーツアパレルメーカーの日本支社で、コロナ禍により消費者需要が店舗販売からECへとシフトし、消費者までのラストワンマイルの物流コストが急増していました。また、工場、倉庫、需要地を結ぶネットワークについても、従来のスタイルから倉庫を需要地サイドに近接させ、拠点数を増やすいわば「EC型」へのシフトが求められていたといいます。

そこで、下図のように「初期分析」「現状再現」「最適化」の3ステップでアプローチを実践。「最初はシンプルなモデルから始め、徐々に現実的な条件を加え最終的な最適化計算を実行していきました。」(田中氏)

初期分析では現場へのヒアリング、WMS(倉庫管理)からのデータ取得より現場を把握し課題を設定。SCD&Pを利用し拠点の候補地を決めるための簡易分析を進めていきます。

次の現状再現では各種コストを分析し、SCD&Pのモデルへの落とし込みを実践。「ここは物流会社の強みが活きる部分で、輸送モードの区分や車両サイズなどのパターン別に様々な制約条件を反映し、精度の高いモデルを作成するようにしています」と田中氏。

最適化のフェーズで様々なシナリオの下、輸送費・保管費・作業費の合計を最小化するモデルを作成し最適化計算を実行。合計3ヶ月間でネットワーク最適化プロジェクトを完了し、その後具体的なオペレーションの提案までつなげました。

成果としては新規物流拠点を加えることで1割のトータルコスト削減と4割の配送距離削減が可能な物流ネットワークを提案。温室効果ガス排出量なども評価項目に加えているのが特徴で、「近年では非財務指標も重要なKPIになっており、複合的な要素を加味したプランの推奨が求められています」と天春氏も語ります。

2社目は物流業務を受託していないコンサルティングへの活用事例。日系素材系メーカーの企業統合プロセスにおけるサプライチェーン統合戦略の立案をサポートしたものです。

1社目の事例とは逆で、課題は統合前の各社が全国規模の物流ネットワークを既に擁し、物流拠点が過剰になっていたこと。各拠点が管轄する納品先の全体的な見直しも求められていました。

新規の顧客のため、初期分析に3か月をかけ、サプライチェーンの現状に関するヒアリング、各種データの確認、データクレンジングなどを丹念に実践。「しっかりと課題意識を合わせた上でプロジェクトをスタートしました。」(田中氏)

現状再現と最適化のプロセスでは、1社目と同様にSCD&Pを活用し、コスト構造、制約条件を加味したモデリング、最適化計算を実践。隔週でミーティングを行いながら、現実とモデルをすり合わせながらプロセスを推進し、最適なプランを推奨します。

成果としては、25拠点削減により現状の物流コストから11%のマイナス、年間26億円のコスト削減のポテンシャルを算出しました。

戦略立案から実行まで対応するサプライチェーンの最適化を支援

ここで同社SCDサービスのポイントの1つに挙げられるのが、コスト削減額から見た最適解だけでなく、異なる複数のオプションを提示すること。例えば、2つ目のケースでは下図のように20拠点の削減でも25拠点削減とのコスト削減の差はほぼ変わらない結果が出ており、「減価償却が終わっていない自社拠点があったり、契約期間が残っている賃借の倉庫があったりといった現実に即した戦略を検討できるよう対応しています。」(田中氏)

2つ目としては、各種コストのトレードオフを考慮し、トータルコストが最小となる物流ネットワークを導出していること。

例えば拠点数を減らすと、拠点から納品先までの平均配送距離は伸び、一般的に配送費は増加します。ただし、作業費や保管費は“規模の経済”により減少し、拠点固定費や幹線輸送費も低減。現状と最適解を見据えながら、ベストなプランを提唱しています。

さらに、Coupa「SCD&P」の有効性として、こうしたマクロなコストだけでなく、細かい単位で最適化されたフローやコストを確認できること。SCD&Pの活用により、すべての拠点間、拠点から納品先までの実経路の距離に要する時間を計算し、実態に近い形でシミュレーションするなど、具体的な施策に落とし込むのもSCDOSならではの特徴です。

今後の目標に掲げるのは、SCDOSのさらなる高付加価値化です。SCDを中核に、「経営層に向けた戦略レベルから管理層の計画・管理、実行層の手配・実行までトータルで支援し、定期的な改善サイクルによりお客様のビジネスをサポートとして参ります」と天春氏。その観点からCoupaのようなパートナー企業との連携強化も欠かせないといいます。

「LOGISTEED(ロジスティード)」というビジネスコンセプトの下、物流の領域を超えた新たな価値提供を追求する同社。DXソリューション「SCDOS」の新たな展開にも要注目です。

 

※ 2022年7月講演当時(会社名、所属部署、役職名は講演当時のものです。)