購買管理システム導入を阻む障壁

調達・購買から経費管理、請求書発行、支払い、サプライヤー管理など、企業のあらゆる支出とそれに関連したプロセスを管理、自動化する購買管理システム。ビジネス支出管理の業務効率化には欠かせない存在で、経理業務のデジタル化も後押しする購買管理システムですが、その導入を阻む障壁が存在すると、森氏は指摘します。

「紙やPDFで届く請求書の入力に手間が掛かるほか、従来システムからの移行が難しいといったケースが多く挙げられます。なかでも障壁となるのが、電子帳簿保存法やインボイス制度など日本独自の法制度です」(森氏)

大手ERPの多くは外資系企業が運営しているため、ローカル対応しておらず、こうした法制度への対応ができない事態が多発しています。

Coupa×Remota連携で経理DXを実現。AIを活用した電帳法・インボイス制度への対応方法とは

Coupaもそのままの状態では法制度に未対応。こうした状況を打開するのが、ファーストアカウンティングが展開する「Remota」です。

Remotaは経理業務に特化したAIソリューションツールです。運営するファーストアカウンティングは日本企業のため、日本の法制度にも迅速に対応。様々なフォーマットに対応して請求情報を自動でCoupaに連携し、インボイス制度や改正電子帳簿保存法といった、日本独自の法制度に準拠した処理を実現しています。

Coupa×Remota連携で経理DXを実現。AIを活用した電帳法・インボイス制度への対応方法とは

紙やPDFをAIで自動的に電子化

Remotaの特徴は、あらゆるフォーマットに対応し、自動化を実現する点です。コロナ禍によるリモートワークの導入により、請求書のPDF発行が普及しました。RemotaではこうしたPDFが添付されたメールをシステムに転送するだけで、OCRで明細などの情報を読み込み、自動的にCoupaに連携します。

一方で、紙で発行された請求書もなかなかなくなりません。電子データの請求書が普及するヨーロッパでもいまだに紙の請求書が残っていると言われています。Remotaでは紙の請求書をスキャンし専用のストレージにアップロードするだけでOCR処理が実行され、Coupaとも連携されます。

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日本独自の法制度にも対応

日本では、インボイス制度が2023年10月から開始されます。国税庁の指導では、請求書が発生するたびに、適格番号を国税庁のデータで確認することが求められています。これを人の手でチェックするには工数がかかり、電子化のメリットが失われかねません。

Remotaでは、国税庁のデータベースと連携して、読み込んだ請求書の適格番号が適切であることをその都度自動で判定。さらに登録番号の記載有無も検知し、書き漏れのあるケースのみが通知されます。

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また、電子帳簿保存法が2022年に改正。これにより電子で取引されたデータは、電子データで保存するように要件が変更されました。猶予期間が終了する2024年1月1日以降は、電子データ保存が義務化されます。

森氏は「電子データ保存が、経理担当者の負担を減らすきっかけになる」と話します。

「経理担当者にとって避けるべき事態に、国税監査や内部監査時に求められた請求書がすぐに開示できないことが挙げられます。電子データ保存は電子取引のみで構いませんが、これを機に紙の請求書もデジタル化することで、検索可能になり、すぐに開示できるようになります」

紙とPDFどちらの場合もRemotaで処理することで、保存要件に準拠した形式での自動保存が可能です。加えて、保存期間要件を上回る10年間クラウド上で保管されます。

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AIが異常値を自動検知して不正防止

ほかにもRemotaでは、現場担当者の負担や不正を未然に防ぐ機能が搭載されています。

1つ目は、「請求書重複防止アラート」です。その名のとおり、請求書が二重に発行されている場合などに自動検知。これにより二重計上、二重支払いを防ぐことができます。

2つ目は、「支払いマスタへの自動参照」です。請求書関連の不正事案で多いケースが、銀行の支払口座を変えられてしまうこと。Remotaでは支払いマスタにないものを異常値として検知し、確認するよう通知されます。

3つ目は「自動補完機能」です。メール件名に発注番号・プロジェクト番号を記載するだけで、自動的に番号を読み取り反映。これによりプロジェクトと請求書を自動で紐づけることができます。

4つ目は、「買掛金と売掛金の自動消込」です。経理業務で特に煩雑なのが買掛金・売掛金の処理で、煩雑さの原因は入金額と請求額に差が生じることです。そこで、Remotaでは一連の処理を生成AIとPeppolで自動化。検品後にWMSに連携されたデータをもとに、その都度メーカーに明細書を通知し、売掛金を消し込みます。「煩雑な処理は不正の温床になりますが、自動化することで不正の抑止につながります」と森氏は話します。

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業務を効率化する購買システムですが、導入したからといってすぐに現場作業が簡単になるわけではありません。「そのままでは手間のかかる面倒なオペレーションはAIを活用することで自動化でき、利便性を向上させることができます。また、調達処理の電子化は、不正行為への牽制にもつながります」と森氏は話します。

CoupaにRemotaを連携することで、さらに利便性の高い強力な購買システムを構築できることがわかった今回の事例。ぜひ参考にして、請求処理も含めた社内の購買体制構築を検討してみてはいかがでしょうか。