同社はデロイト トーマツ グループが擁す、監査・税務・法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーの総合力と国際力を活かし、組織が抱える課題に対し、戦略立案から実行まで一貫して支援。調達・購買領域コンサルティングにおいても最新の調達トレンドを踏まえた課題解決の支援、Coupaを活用した調達部門へのシステム導入、グローバルへの業務標準化のサポートなどを行っています。

 

調達戦略のシフトに伴い、デジタル変革×オペレーション改革の重要性がアップ

冒頭、坂氏は企業とそのサプライチェーンを取り巻く環境、調達部門の戦略方針の変化について言及。

従来、コストと効率性を第一に、サプライチェーンのグローバル化、調達先選定が進められる一方、「貿易戦争の激化や資源の供給不足などのあおりを受け、サプライチェーンの脆弱化が課題として挙げられるようになりました。」(坂氏、以下同)

また、ESG基準の確立・概念の広まりを受け、環境や倫理など企業の社会的責任が強く問われるようになっていると指摘。「いかに安定的に調達し、かつ社会の信頼を得られるか。今後の調達戦略のポイントは従来のコスト削減を中心としたQCD対応に加え、リスク管理およびCSR重視へとシフトしつつあります」と語り、環境(Environment)、倫理(Ethics)、有事対応(Emergency)の“ 3つのE ”への備えが求められているといいます。

 

 

世界の先進的企業のCPO(最高調達責任者)や調達担当者へのアンケート調査を基にした同社リサーチ結果(The Deloitte Global CPO Survey 2021)にも、意識の変化が色濃く表れています。

今後12か月に優先して取り組むテーマとして「リスク管理機能の向上」が、前調査(2019年)と並び優先テーマに位置づけられるほか、「企業の社会的責任の改善」を挙げるCPOが約2割増と優先度が向上。

また、従来の優先テーマだった「コスト削減」の優先度が下がる一方、「業務効率の改善」「デジタル改革」が上位に浮上しています。これらの結果からも、坂氏は「戦略シフトに伴い、デジタル改革と一体化したオペレーション改革の推進が求められています」とグローバルな調達トレンドを指摘します。

 

調達業務ガバナンスモデルは全世界共通の基盤が必須

では、オペレーション改革はどのように進めていけばよいのでしょうか。坂氏は約20年のコンサルティング経験、調達業務改革に従事してきた立場として、大前提となるグローバルレベルでの調達業務ガバナンスモデルとして「統合型」「連邦型」「分散型」の3つの形態を挙げます(下図)。

 

 

統合型は、日々の業務運用を含め調達オペレーションをグローバルで一体運営するもので、「欧米の企業ではこのモデルが主流となっています。

連邦型は、調達の戦略やオペレーションの基盤はグローバルで標準化する一方、調達オペレーションは各地域・国ごとの運用を基本とし、統合型に比べるとゆるやかな標準化・統合を目指すモデルになります。

最後の分散型は、調達戦略は共有し、オペレーションは基盤・実行ともに各国独自で取り組むもの。「グローバルレベルでオペレーション改革を実践するならば統合型もしくは連邦型のどちらを志向するかを決定する必要があります」と指摘。

どちらかを選ぶかは企業文化や経営体制のあり方などに密接に関与するもので、それぞれの企業の実態、実情に合わせて選んでいくケースが多いといいます。

 

オペレーション改革はシステム導入から運用定着化まで一気通貫で行う

次に、坂氏は具体的な改革の進め方を3ステップで解説。下図のように、現状の購買支出状況やコスト分析を通じた見直しにより早期のコスト削減効果を刈り取った後、システムソリューションを活用した標準モデル(テンプレート)を構築。その後、各国、グローバルに展開していくアプローチが主流だといいます。

 

 

つまり、グローバル標準のオペレーティングモデルとなる業務プロセス・システムのテンプレートを構築した後、テンプレートにローカル要件を取り込みながら各国に展開。導入したシステムの運用保守を行いながら、最新の業務のベストプラクティスを随時取り込みながらテンプレートそのものをアップグレードさせていくものです。

システム導入から、その後の運用定着化までのプロセスを「お客様と当社、グローバルチーム、ローカルチームが一体となり、一気通貫で行うことで確実な効果刈り取りが期待できます。」

 

SaaS型パッケージの活用により短期導入、追加開発最小化を実現

こうしたグローバルオペレーションの改革プロジェクトにはどのような特徴、メリットがあるのか。浮上する課題は何か。坂氏は間接材調達を例に、以下のように解説。

1つはテンプレートを活用することで短期間で導入できること。「P2P(Procure to Pay。プロキュアトゥペイ)のみなら5~6か月、ソーシングも含めると8~9か月で導入可能といった短期間での導入実績があります」。

2つ目が追加開発を最小化できること。機能が充実したSaaS型のパッケージを活用することで、個別開発が発生するのはインターフェース・発注書フォーム程度。「追加開発はほとんど発生しないのが当社の経験則上の認識です。」

グローバルプロジェクトならではの課題としては「コミュニケーション」と「タイムゾーン(時差)」を挙げます。

「言語の壁だけでなく、意識の違いもプロジェクト推進の大きな課題となってくるため、各国間のファシリテーションをいかにうまくやるかが1つのポイントになってくると考えています。」

時差については、それを前提にプロジェクトのスケジュールを組んでいくことが肝要ですが、「うまく活用すればプロジェクト運営の効率化にもつながります」とし、この辺りのハンドリングも成否のカギを握るポイントといえそうです。

同社には坂氏のような調達購買、サプライチェーンの改革に精通するコンサルタントが多く在籍。「各国でのCoupaに関するコンサルティング、お客様のグローバルでのCoupaを活用した調達改革をご支援する体制も整っています。」

また、セッション内でも紹介したグローバルのCPOへのアンケート調査結果をまとめた独自の「CPO Survey」を基に、顧客とのディスカッションも積極的に行っているとか。同社ならではのインサイトもぜひ参考にしたいものです。