革新的技術で外部環境の変化に対応
最初に鶴岡は、激動の時代である今、景気の見通しに影響を与える世界的な不確実性と複雑性が存在すると指摘。例えば、物価高などの経済的・構造的課題、地政学的リスクや災害によるサプライチェーンの混乱などは購買調達に直接影響します。
このような経済環境に対応するため、AIをはじめとする革新的技術を積極的に採り入れ、利益の漏れが生じやすい現行の業務モデルを改革していく必要があると鶴岡は主張します。
鶴岡は2008年のリーマンショックを例に挙げ、投資し続けた会社とそうでない会社の間に利益率の差が生じたことを紹介。「不確実な時代であっても、そのときの企業の対応が将来の実績拡大に大きく影響する」と述べ、「どのような外部環境であっても、会社を経営する上で必ず発生するのがコストであり、支出のガバナンスが一番の強みであるCoupa導入は投資のひとつ」だと提言します。
購買改革の勘所とは
もっとも、ガバナンス強化のための購買改革は一朝一夕にできるものではありません。長い道のりとなる購買改革の勘所となるのが、①目的(何を成したいか)、②ユーザー定着(UX)、③ステップ毎の成功指標追跡 です。
③について鶴岡は、Coupaが推奨する支出管理の成熟度モデルを挙げました。
ステージ①:日常での業務
ステージ②:ソーシングの習得
ステージ③:カテゴリー戦略
ステージ④:ビジネスイノベーション
加えて、ステージ①より前の導入・定着段階でプロジェクト成功の指標を定めることも重要です。Coupaはサクセスメトリクスと呼ばれる指標を、節減・効率化・定着の3つのカテゴリーで公開。各指標におけるCoupaのトップパフォーマー25%の中央値が表示されているので、自社の現状及び目標とのギャップがリアルタイムで確認できます。
支出管理の各成熟段階でCoupaがサポート
ステージ①の日常での業務について、鶴岡は実際にCoupaにログインし、購買をデモンストレーション。購買品をカートに入れて購買申請書を提出できる使い勝手のよさや、マネージャーサイドにて発注時点で予算統制できる特徴など、高いユーザビリティと便利なAIの機能を披露しました。
また、サプライヤーも無償のサプライヤーポータルに接続できるため、電子化などの協力を求めやすい環境にあります。さらにサプライチェーンコラボレーションでは、フォーキャストやPO変更など、より高度な電子取引が可能です。
「サプライヤーとのコラボレーションを高めることで購買プロセスの自動化が進み、より戦略的な調達活動が可能になる」と鶴岡は強調します。
ステージ①において現場のガバナンスが効いてくると、次にステージ②のソーシングの習得へ進みます。ソーシングは支出分析から始まるのが一般的ですが、CoupaではAIが日々の動きをモニタリングして支出の増加や契約に紐づかない支出、多額な申請などを検知するため、リアルタイムに正していくことが可能です。
また、納期や環境負荷、リスクスコアなど価格以外の要素を加味したより複雑なソーシングに関しては、データをもとにしたシミュレーションを行い、数パターンのシナリオを提示する機能(CSOモジュール)が備わっています。
Coupaでは、こうした見積交渉で得られた成果が契約に紐づき、発注と請求がどのくらい上がったか、契約単位でトラッキングすることが可能です。グローバルトップパフォーマーのベンチマークでは契約内支出率が約8割、契約管理サイクルタイムが約8日であると鶴岡は紹介します。
ステージ③のカテゴリー戦略では、まずサプライヤーのリスク評価ができます。ユーザーが定めたロジックに基づいて、サプライヤーの実績やアンケート結果などからリスクの格付けが可能。さらにこのリスク評価に紐づいた発注や請求に対しては、ワークフローで介入することも可能です。
また同じくカテゴリー戦略では、組織に負担がかかるカテゴリーエグゼキューションが大変ですが、Coupaの「Category Planner」を活用すれば、カテゴリープランニングのみならずカテゴリーエグゼキューションまで滞りなく進められます。Category Plannerは、「企業をより利益に直結できるような組織へと確実に変えるための支援を行う製品」であると鶴岡は強調します。
コロナ禍を乗り切ったUberの事例
購買改革の企業事例として、鶴岡はUberを紹介。アメリカで配車サービスの多大なシェアを誇るUberは2019年に上場しました。上場の約2年前から、購買ガバナンスの整備を目的としてCoupaを導入。現場主導ではなく、デジタル化・可視化されたワークフロー上で業務を行うという要請のもと購買改革が行われました。
上場後は、上場で得た資金を使ってテクノロジー企業やファシリティ企業を買収して成長する戦略へ転向。買収した企業に対しても、支出統制のツールとしてCoupaを世界共通で導入しています。
このように上場前後でCoupaを活用していたところ、2020年にコロナ禍に突入。モビリティをビジネスとするUberは当然多大な影響を受けました。しかしUberは投資自体を止めることはせず、自社でCoupaの設定を調整して外部環境の変化に対応し、乗り切るという戦略を取りました。
Uberのような改革事例のデータは「Benchmarking Report」としてCoupaで公開されており、誰でもダウンロードが可能です。「事前承認済み支出率や発注書の電子処理率といった参考になる指標が記載されているので、ぜひダウンロードして活用していただきたい」と鶴岡。
最後に鶴岡は、購買改革の勘所をまとめ、外部環境の変化に対応するためのプラットフォーム導入をぜひ検討していただきたいと提言しました。