このブログのポイント
- 新たなツールへの抵抗感の根底にあるのは、予算の制約、システム導入疲れ、供給ラインの混乱を引き起こすことへの恐れです。
- レガシープロセスを使い続けることは、企業にとって競争上の不利に働きます。 「様子を見る」企業と技術導入に積極的な競合他社の格差は急速に拡大しています。
- 従来の調達(ソーシング)では、戦略(意図)、実行(実際の入札)、オペレーション(交渉したアイテムの購入)がサイロ化しており、価値を持続させることに失敗することがよくあります。
- 手動モデルからAIドリブンモデルへの移行により、調達は受動的な機能から能動的な機能に変化します。S2P (調達から支払い)プロセス全体がデータに基づいたループに進化します。
調達(ソーシング)がAIやテクノロジーによってどう再構築されるか多くの議論がなされている中で、混乱への適応能力について論じる視点は見失われがちです。 現在の環境において、調達チームは混乱に直面し、最安価のサプライヤーを見つける以上の課題に取り組んでいますが、これは決して初めてのことではありません。 調達の実務者およびアドバイザーとしての数十年にわたる著者の経験から、その例をいくつか紹介します。
- ESG (環境・社会・ガバナンス)目標の組み込み: 中国のような大規模市場で流通を行っている食品・飲料企業は、CO2フットプリントの大幅削減を報告する必要があったため、車両(過積載はしない)と排出タイプを最適化するための措置を講じました。
- 社会の一員としての企業責任: 鉱業セクターの企業が地元の労働力を活用することでコミュニティ強化をサポートしていた例もあります。 具体的には、鉱山に近い人材プールを優遇するシナリオを構築することを意味していました。
- レジリエンス(回復力)の構築: コロナ禍のあいだに発展した企業の調達チームは、高品質のPPE(個人用防護具)に対する緊急ニーズのバランスをとりながら、サプライチェーンチームと協力し重要コンポーネントの生産を高リスク地域から離し分散させました。
このようなシナリオや類似した状況において、調達チームは大きな問いに直面しました。
わかっていることに基づいて行動するべきか、それとも変化を受け入れるか。そして、大きな変化をもたらすことができると信じつつ、過信や期待外れに警戒するべきか。
過去には、調達チームは何もしないことがある程度許容され、課題は既存のツールキットで解決していました。 市場の変化のペースは対応できるレベルであったため、レガシーのプロセスで事が足りていました。手動での監視は面倒ではあるものの、戦略と実行の間のギャップを埋めることができました。
調達活動において機会を見逃すことは、今や企業を競争上の不利な立場に置く大きな原因になっています。 AIとエージェント型AIは、調達活動の特定の分野において、より迅速かつ効果的に作業を進めるための原動力であることは間違いありません。特に意思決定(実行)の最適化や、その決定の利点をビジネスに適応する(業務に反映する)ことにおいて、その効果は明らかです。 しかし、AIだけですべてが事足りるわけではありません。 AIが動作するプラットフォームが非常に重要になります。 戦略、実行、オペレーションを最高の形でつなげられなければ、最大規模で倫理的に調達されたデータセットに基づいたS2P (調達から支払い)を行っても、限界があるでしょう。
調達を現状維持するデメリット
すでに企業で活動している調達チームは、新しいテクノロジーやプラクティスを導入しても、それをすぐに受け入れることに抵抗感を持つことが多く、 その理由には次のようなものがあります。
- 予算の制約。 調達(と購買部門)がコストセンターと見なされている場合、会社の戦略的な動きを支援するために必要な資金が調達チームには与えられません。
- 過去のERP導入やアップグレードでの疲れ。 終わることのないテクノロジーのアップグレード、高いプレッシャー、過剰なツール、サプライヤーに対する膨大なESG調査や監査に圧倒される調達チームでは、システムが本番稼働すればすぐに調達活動に役立つという期待が遠くかすんでしまいます。
- 整備された供給ラインを崩すことへの恐れ。 生産プロセスの要である供給ラインに 中断があれば、製品は製造されず市場に出ることがありません。 これは企業にとって大きなリスクです。
四半期報告書では見えないけれど、静かに存在しているリスクがあります。それは、待つことのコストです。 調達チームが新しいアプローチや機能への投資を遅らせれば、市場に足並みを揃えることはほぼできません。 むしろ遅れをとることになります。 競合他社はトライ&エラーを続け、新しいテクノロジーを採用し、AIなどの最新技術を用いた迅速な市場分析、より多くのシナリオ評価、精度の高い情報に基づいた意思決定の方法を学んでいます。 新たに技術を導入する企業であっても、これらの側面で恩恵は受けられます。
これらのテクノロジーは指数関数的なペースで進化し、テクノロジーの有無による格差は時間とともに開く一方になります。 「様子を見る」という慎重な決定は、構造的に不利な状況を急速に生み出す可能性があります。ペースが加速する中で、その変化に追いつくのはさらに大変になります。
ビジネスリーダーの声
Coupa Clarity AIインパクト調査: AIへの意欲を実際のROIにつなげる、2025年12月
調査パートナー: INCISIV
従来の調達では企業戦略に貢献できない理由
テクノロジー投資を遅らせる理由が何であれ、調達チームには既存能力を活用して達成したい高い目標があります。それは、企業戦略に沿った意思決定を行い、複雑なプロセスを管理し、短期的節減以上の価値を提供することです。 これらの目標は企業の利益に影響を与えます。調達において収益性に貢献する最速の方法は、調達の実行とオペレーションに結びついたカテゴリー戦略をとることです。
以前は、戦略と調達を結び付けるのは容易ではありませんでしたが、そのお話の前に、調達における3つの領域について定義したいと思います。
| 戦略: 意図を持って始める | 実行: 実世界の意思決定を最適化する | オペレーション: 価値を定着させる | |
|---|---|---|---|
| 行うこと | 効果的な調達は、明確なカテゴリー戦略から始まります。 戦略には、市場分析だけでなく、コスト、レジリエンス、サステナビリティ、リスク、サプライヤーの役割に関する明示的な意思決定が含まれます。 | 戦略的調達により、調達の複雑さを単純化するのではなく、モデル化することが可能になります。制約、複数の選定シナリオ、競合する目的を捉えることができます。 | 最適化された選定の内容を契約に直接組み込み、単一ソリューションでコンプライアンスに準拠した購買を可能にすることで、節減漏れが減り、単発イベントから持続的な価値を得られるようになります。 |
| 重要性 | 戦略を立てることで、意図を明確に定義し構造化できます。最安値を求めるだけでなく、合意された成果を達成するソーシングイベントの設計を確実に行えるようになります。 | カテゴリー戦略は、実際の世界で実行されて初めて価値を生み出します。 結果は、単なる節減の向上だけではありません。元の戦略に沿った意思決定を透明性と正当性を持って行えるようになることです。 | ソーシングイベントが完了すると交渉で得られた成果が失われることがよくあります。 オペレーションが戦略と実行に紐づいていれば、合意された内容の購買を行い、そのパフォーマンスを戦略的意図と照らして追跡することができます。 |
デジタル購買エコシステムは過去の支出を分析し、実行を管理することに優れていますが、戦略的計画と日々の業務をつなぐ橋となるカテゴリー戦略へのスケーラブルな構造化アプローチがない場合が多いです。 その橋を構築する適切なテクノロジーがないと、カテゴリー戦略の計画は策定されても孤立する傾向があり、状況に応じた調整も行われず購買担当部門からは切り離された状態になります。
AIとテクノロジーの進歩により、このような断絶は解消されています。 たとえば、入札がカテゴリーの3年計画に適うものかを人が手動で確認するかわりに、AIエージェントがプロセスの進行をリアルタイムで監視できます。 プロポーザルの内容がサステナビリティ目標から逸脱した場合に警告を出したり、急激な市場のボラティリティに基づいてカテゴリー戦略の変更を提案したりすることができます。 今日のカテゴリーマネージャーや調達チームは、AIドリブンのカテゴリー戦略エンジンを活用し、戦略の開発・調達実行・業務を単一プラットフォーム上で結びつけています。 すべてが1つの場所から行えます。担当者は最高水準のフレームワークを開発し共有できます。戦略的な推奨事項を得て、戦略目標と実施計画を作成し、エグゼクティブサマリーを生成することができます。
調達機能への投資を先延ばしにする企業では、調達チームが受け身になり、次のような問いに対処することを強いられます。
- 交渉で数百万ドルを節減できたと報告したが、部門の実際の支出は依然として増加傾向にあるのはなぜか?
- 社内のステークホルダーが連絡してくるのは、ハンコや署名が必要なときだけなのはなぜか?
- 契約の期限に基づいて節減のための契約の再入札を行う理由は何か?
チームが高度な仕事ができるように支援することができるはずなのに、こういったことで悩むことになります。
行動しなければ、調達とP2P (購買から支払い) の間で価値を失うことに
レガシーシステムは、上流と下流の購買活動を連携するべく進歩を遂げてきました。引き継ぎの漏れを防ぎ、サイロの形成や、データや契約の活用機会の損失が起こらないようにしています。 しかし、緩い連携のS2P (調達から支払い)プロセスを、双方向の継続的なループに進化させるのは、AIを活用したオペレーティングモデルです。 P2P (購買から支払い)のライフサイクルで実際に起こることが、情報としてソーシングイベントに反映されます。
先進的な調達チームは次のような変革を進めています。
| 静的調達 | AIを活用した継続的調達 |
|---|---|
| チームは価格交渉を行い、契約期間中それを遵守します。 | AIは市場を常に監視し、P2Pの請求書とシグナルを照合し、再交渉を提案します。 |
| 選定は、RFPの段階で交わされた約束に基づいて行われます。 | AIはP2Pライフサイクルで生成された証拠を監視し、それに応じてランキングを調整します。 |
| 供給不足や契約の期限切れが、ソーシングイベントのトリガーとなります。 | AIはP2P支出パターンを分析し、調達チームに対して事前に推奨事項を提示します。 |
| サプライヤーが突然納品不能となり、代替サプライヤーを見つけるために人の介入が必要になります。 | AIは、審査済みのサプライヤーのデータベースを即座にレビューし、調達量をシフトする場所を提案します。 |
AIと統合プラットフォームを活用した支出管理により、調達チームは、P2P (購買から支払い)プロセスで支出された金額情報に基づき、より良い価格交渉を次回のソーシングイベントで行うことができます。
目的に適した調達戦略を立てていますか?
調達アプローチが今のまま変わらないことを、どの程度許容できるでしょうか? チームが疲弊し、すべてのサプライヤーとの関係が戦術的になってしまった頃には、利益率は著しく低下している可能性があります。その結果、競合他社の優位に立つことはできなくなるでしょう。 調達チームも、会社が何もしなかった場合に何が起こるのかを考えているはずです。
- 1週間あたりどのくらいの時間を、戦略担当者やエグゼクティブは、データの入力や壊れたスプレッドシートとの格闘に費やしていますか?
- 3年間で節減機会の1%を損失した場合、どの程度のコストが発生しますか?
- 重複契約や管理外テール支出の漏れは、気が付かなければ、どれだけ発生するでしょうか?
- 自社が新しいベンダーの審査を手動でおこなっているあいだに、競合他社はすでにベンダーと契約を済ませているのでしょうか?
- 次に混乱が発生したら、その対応にかかる時間は数週間、もしくは数時間でしょうか?
- 次世代の優秀な人材は、いま自社で使用している調達ツールを使ってここで働きたいと思うでしょうか?