本記事は「継続的なサプライチェーンデザインが必要な理由」を元に作成した記事です。
どれくらいの周期でサプライチェーンデザインを再検討し、更新していますか?1年に1回でしょうか?それとも2年に1回でしょうか?
多くの企業と同じように、過去約2年の間にサプライチェーンネットワークの見直しを行ったと推察されます。しかし、そのような見直しも、世界情勢や状況に応じて見直さなければ、十分とは言えません。
たとえ、S&OPのプロセスに最新のテクノロジーを採用したとしても、現実的には難しいのです。市場の急激な変化に対応できるようにサプライチェーンをデザインしなければ、最適な計画をしても無駄となり、信頼性を失うことになります。
Supply Chain Insights社のLora Cecere氏が語ったように、従来のサプライチェーンデザインと計画は「各国政府は合理的で、変動は少なく、物流は常に利用可能である」という考えが前提でした。しかし、今日は、そのような概念はもはや成立しないことを多くの人が認識しています。
不定期あるいは単発的なサプライチェーンのデザインは、組織のサプライチェーン回復力、持続可能性、収益性の観点では不十分です。ここでは、その理由と組織として何を考慮すべきか説明していきます、まずは共通認識について考えていきましょう。
サプライチェーンデザインのソリューションと定義
サプライチェーンデザイン:サプライチェーンを動かしている要素、手段、手順、方針を定義、検証、最適化し、ビジネス目標と連携する。
エピソード型デザイン:プロジェクトベースのアプローチであり、定期的もしくは必要に応じてサプライチェーンをデザインする手法です。他のビジネス目標に密接に関連する場合もあれば、そうでない場合もあります。
継続的デザイン:最適なサプライチェーンの構造、方針、プロセスフローを開発し、継続的に改良することです。これは,分析、シナリオプラニング、そして AI や強力なアルゴリズムエンジンによるエンドツーエンドモデルでのシミュレー ションによって実現されます。先進的な組織では、このような取り組みはCoE(Center of Excellence:センターオブエクセレンス)によってサポートされています。
エピソード型のサプライチェーンデザインが失敗する理由
あるグローバル食品・飲料メーカーは、かつてヨーロッパ全域で毎年数種類のサプライチェーンモデル開発を行っていました。しかし、サプライチェーンやビジネスが複雑化するにつれ、それでは十分でないと認識します。
現場の状況変化にスピーディーに対応できず、地域や地方の事情に配慮したデザインにならなかったのです。ビジネスと世界の状況を考慮した場合、企業は、より多くのシナリオを高頻度で実施する必要があります。
このような認識を持っているのは、この企業だけではありません。パンデミック以前から、多くの組織が頻繁に、より複雑なサプライチェーン デザインの必要性を認識し始めていました。多くの経営者は、供給の集中化、貿易戦争、規制環境の変化などに対する懸念を挙げています。
では、なぜエピソード型の手法には限界があるのでしょうか。以下が考えられる理由となります。
変化する実情に対して反映できておらず、静的なデザインが前提となっている。
サプライチェーンの拠点、手段、経路、方針を頻繁に見直さない場合、最適とは言えない結末になってしまいます。
適切なシナリオプランがないため、リスクが高まり、俊敏性が損なわれている。
エピソード型のデザインでは頻度が低いため、組織はサプライチェーンの予期せぬ緊急対応時の計画を作成したり、ストレス・テストを十分に実施していなかったりする可能性があります。従来のS&OP重視のシナリオプランニングは、主に需要と供給のバランスに焦点を当て、サプライチェーンデザインに関する基本的な前提を考慮しないで実施されることが多かったのです。これでは、混乱が生じたときに、迅速に対応することができません。
戦略的ではなく、他の機能と統合されず、最適性に欠ける。
結果として、組織は部門を超えたインプットとコラボレーションを通じて最適なサプライチェーンネットワークをデ計画・構築できず、応急処置に終始することになります。
エピソード型のサプライチェーンデザインでは不十分なのに、なぜこの手法が一般的なのでしょう?
それは、変化が困難だからと言えます。多くの組織が、変化に対する不安や抵抗に悩まされています。あるいは、日常的な応急処置に工数を割かれてしまっています。
多くの企業は、システムやプロセスのアップグレードにかかる時間や費用を懸念しています。また、今まではうまくいっていた(多少の不具合はあったとしても)と感じている企業も多く、何から開始すべきか分からない企業も多いと言えます。
継続的デザインに基づくサプライチェーンの改善方法
前述したグローバルな食品・飲料メーカーも、こうした課題の多くに悩まされていました。しかし、継続的なデザインを導入して以来、サプライチェーンモデルを以前の5倍の速度で作成できるようになり、全面的なコスト削減を達成しています。
同社は、価格と在庫状況に基づいて供給源を見直し、流通コストと売上原価を最適化するために生産量を調整しました。また、過剰在庫を避けるために流通センターのカバレッジを変更しています。さらに新型コロナウイルスや労働ストライキなどの危機管理が可能になりました。
継続的デザインは万能ではありませんが、現在と未来の状況に適応できる成熟したサプライチェーンモデルにとって必要不可欠な要素です。
優れたサプライチェーンCoEを兼ね備えた継続的デザインを採用しなければ、組織は顧客満足と企業収益に影響を与える混乱した状況で、事業を継続していかなければなりません。
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