経営のサステナビリティを脅かす要因とは?

経営のサステナビリティを脅かすリスクは、さまざまです。

例えば、「コスト競争で競合に敗れ市場でのシェアを大きく奪われる」「時代の変化に適応できず、市場から淘汰される」といったリスクが顕在化すれば、当然、経営のサステナビリティは低下し、最悪の場合は破綻してしまうおそれもあります。また、主力製品を生産するのに必要な原料や資材が、想定外の為替変動によって高騰したり、世界的な品薄により入手が困難になったり、大規模な自然災害や国際紛争によって停止したり、経済安全保障による輸出規制によってストップがかけられた場合も、経営のサステナビリティは低下します。

加えて今日では、ESGEnvironmentSocialGovernance:環境・社会・企業統治)投資の考え方が世界標準となり「持続可能な開発目標(SDGsSustainable Development Goals)」への貢献といった社会的な責任を果たすこと、あるいは地球環境の保全や社会への貢献を経営課題として推進することが強く求められています。

ゆえに、SDGsの達成に反するような企業活動をすること、あるいは、そうした活動をする企業と取引を続けることで、社会的な信用を失い、その会社や会社の商品が生活者や他の組織から倦厭されたり、優れた人材確保が困難になります。

実際、消費者の64%は地球環境に優しい製品を選択し、ミレニアル世代の40%はESG観点で入社する企業を選んでいるようです。さらに、企業経営層の80%が、投資家に対してESGの取り組みに関する説明責任があると答えたとのデータもあります。

カギを握るデジタルトランスフォーメーション (DX)

上述したような経営リスクを低減するうえで、直接材や間接材の調達購買を適正化することは有効な一手となります。

ここで言う「調達購買の適正化」とは、単に支出を抑えることだけとは限りません。サプライヤーとの取り引きを管理して、調達購買における数々のリスクを低減し、調達購買のサステナビリティ、ひいては経営のサステナビリティを高いレベルで維持することも、調達購買の適正化には含まれます。

また、ESGSDGsの観点から適切なサプライヤーを選り抜き、支出を抑制しながら、サプライチェーンのCO2排出量を低減したり、サプライヤーの倫理性やコンプラアンス性、さらには多様性を確保したりすることも、経営のサステナビリティを確保することにつながっていきます。

Coupaの調査から、企業のサプライチェーンのCO2排出量は、当該企業が直接排出するCO2量の平均5.5倍に及ぶことがわかっています。そのCO2削減に向けてサプライチェーン(商品の輸送手段や輸送ルート)を最適化することは、社会貢献であると同時にサプライチェーンコストの低減につながる取り組みと成りえます。

また、べつの調査で分かったのは先進的な企業は、平均23.9%の支出を多様性に富んだサプライヤーとの取り引きに費やしいることが分かりました。さらに、サプライチェーンにおける多様性の確保はリスクの分散化や調達購買支出の低減にもつながっていたのです。

こうした調達購買の適正化を図るうえでカギとなるのが、調達購買のデジタルトランスフォーメーション(DX)です。

デジタルプラットフォームに蓄積されたデータを活用する

調達購買のDXとは、「ソーシング」から「サプライヤー管理」「契約」「購買・発注」「請求処理」「在庫」「支払照合」、さらには「分析」に至る全支出プロセスをデジタル化して可視化し、全体の統制や最適化、さらには改善を図ることを指しています。

例えば、調達購買のDXを支えるCoupaBSM (Business Spend Management) プラットフォームに対して、全社の直接材、ないしは間接材の調達購買を集中させるとします。これによって、全社的な調達購買業務のぺーパーレス化、効率化、標準化が実現されるとともに、直接材や間接材支出のプロセスが可視化され「誰が、いつ、どのサプライヤーから、何を購入したのか。また、その累計額がいくらか」が、組織を跨いだかたちで把握できるようになります。これにより、支出に対する統制がかけやすくなるほか、無駄な支出を低減できるようになります。

AI(人工知能)の活用でサプライチェーンのCO2排出量を最適化

Coupaでは、AI (人工知能) によってサプライチェーンを最適化する技術も提供しています。それは、過去の需要実績から将来の需要を予測する「Demand Modeler」であり、未知のコスト削減機会を発見する「Supply Chain Prescription」、そしてサプライチェーンモデル構築やシナリオ分析を行うための「Supply Chain Modeler」です (図1)

図1:Coupa BSMプラットフォームのサプライチェーン最適化技術
図1:Coupa BSMプラットフォームのサプライチェーン最適化技術

これらの技術を使うことで、サプライチェーンのネットワークや在庫水準、資材・商品の輸送モード(=輸送手段)、輸送ルートなどの最適化を図ることが容易になります。加えて、Coupaは、18年以上の長きにわたって培ってきたサプライチェーンデザインの機能をサプライチェーンの「デジタルツイン」を創出する機能へと昇華させています。このデジタルツインを用いることで「What-ifシナリオ」ベースのシミュレーションを通じ、定量的、かつスピーディなコストインパクトの検証が可能になります。

ここで仮に中国にサプライヤーがあり、日本全国に在庫拠点と販売ネットワークを有し、かつCoupaのBSMプラットフォームを使用している日本企業が、国内でのサプライチェーンの最適化に乗り出しましょう。

このような場面においてCoupaのAIやデジタルツインを使うことで、次のようなことが可能になります。

現状の再現:現状の拠点配置、輸送ルート、仕入れ・物流コストの可視化)
     →・現状の最適化(現在の制約条件下でのコストの最適化)
        →・シナリオ分析:(将来的なサプライチェーン戦略をモデルに反映した分析)」
          →・AI活用シナリオ分析:(Supply Chain Prescriptionを使ったさらなるコスト削減機会の特定と検証)」などをビジュアルに行うことができます。

さらに、CoupaのAIを使ったサプライチェーンの最適化は、CO2排出量とコストとのバランスの取れたサプライチェーンモデルを構築するうえでも有効です (図2)。

図2:Coupa BSMプラットフォームによるCO2排出量とコストの均衡最適モデリングのイメージ
図2:Coupa BSMプラットフォームによるCO2排出量とコストの均衡最適モデリングのイメージ

実際、Coupa BSMプラットフォームのユーザーである某大手IT企業は、CoupaAIとデジタルツインの技術を使用し、サプライチェーンのCO2排出量を40%削減することに成功しています。と同時にサプライチェーンコストの60%削減も実現しています。また、日本の大手飲料メーカーはCoupaAIとデジタルツインによって配送ルートを最適化し、商品の平均輸送距離を8%削減しています。

サプライチェーンにおける多様性の確保も支援

Coupa BSMプラットフォームを使うことで、世界最大級のサプライヤーデータソースにアクセスすることができ、かつ、サプライヤーを19の多様性カテゴリーに分類し、それに対する支出と紐づけて管理・可視化し、評価 (KPI追跡)することが可能になります(図3)

図3:Coupa BSMプラットフォームによる多様性のあるサプライヤーへの支出の可視化とKPI追跡の例
図3:Coupa BSMプラットフォームによる多様性のあるサプライヤーへの支出の可視化とKPI追跡の例

先に触れたとおり、多様性のあるサプライヤーへの支出を増やすこと、あるいはサプライチェーンの多様性を確保することは、結果的に支出の低減につながっていきます。そのため、CoupaBSMプラットフォームでは、多様性のあるサプライヤーからの調達購買を促進するための機能も備えています。

支出の抑制にはじまり、コンプライアンス、ESG、自然災害や地政学的リスク、さらには経済安全保障への対応など、経営のサステナビリティを維持するために調達購買の業務で成すべき事柄、あるいは配慮すべき事柄は多岐にわたります。その業務を適切、かつ適正に行ううえでは、もはやAIなどのデジタルテクノロジーとデータの活用が不可欠といえます。また、実際にも、Coupaのお客さまは、国内外を問わず、調達購買のDXによって相応のベネフィットを手にし、経営のサステナビリティを高めています。サプライチェーンリスクが依然にも増して高まっているとされるいまこそ、調達購買のDXを急ぐ必要があるのではないでしょうか。