本記事は「企業とサプライヤーの不正支出について理解する」を元に作成した記事です。
不正行為を働く人物の思考とは?
典型的な不正行為者について説明するように言われたら、どのように回答しますか? また、職場での不正行為をどのように定義しますか。資金の横領や法的文書の改ざん、認められていない経費の請求などが考えられるでしょう。
不正は世界中の企業にとって非常に深刻な問題ですが、不正を働くのは想定外の人物というケースが多いと言えます。コンプライアンスに違反した支出を社内で申請したことで発覚した人は、多くの場合で常習犯や反社会的な人物ではありません。実際には、不正よる逮捕者の96%は初犯です。
なぜこの事実が重要なのでしょうか?
人間は複雑な生き物ですが、方針やプロセスの作成者にとっては、その人間の複雑さや性質を考慮することを失念してしまうことがあります。
多くの企業は、不正を防止するために一般的な方針や管理に頼り、疑わしい支出を検知・防止するにはそのような対策で十分だと考えています。しかし、不正支出問題を完全に防止するためには、不正行為者がなぜそのようなことをするのかを理解することが必要です。
不正防止のパズルに欠けているピース
CPA Journalによる記事、Rationalizing Fraud - How Thinking Like a Crook Can Help Pre Fraud(不正の正当化-不正行為者の思考を理解し防止)で著者は、「詐欺師が犯罪を正当化する手法を理解することで、不正防止のパズルに欠けているピースが明らかになる可能性があります。不正を正当化する考えの理解を深めることは、企業統治の専門家や監査員が進める不正防止プログラムの強化に役立つでしょう。」と述べています。
不正問題の深刻さは?
公認不正検査士協会による「2018 Global Study On Occupational Fraud And Abuse (2018年 職業上の不正と悪用に関する世界的研究)」
によると、資金の横領、汚職、財務諸表の不正によって、企業は最大で収益の5%を失っています。収益の5%を不正行為で損失すると、企業の収益や利益率が大いに損なわれます。このような不正を未然に防ぐことは、企業にとって「ちりも積もれば山となる」と言えます。
不正の種類としては資金の横領が一番多く、全体の89%を占めます。
これには現金以外、請求書、経費精算、支払改ざんなどの事例が含まれ、1件当たりの平均損失額はアメリカドルにして11万4,000ドルです。不正行為全体のほぼ半数は、内部統制の不備が原因となります。
始まりのきっかけ-金銭的プレッシャーを感じて
例外はありますが通常、企業で従業員が不正行為を犯すまでには、共通する原因や経緯を考えます。
従業員やサプライヤーが私生活や仕事において金銭的なプレッシャーを感じたときからそれは始まります。そして、多くの場合そのプレッシャーを誰にも打ち明けられず、考え込んでしまいます。
不正についての正当化を考える
金銭的なプレッシャーを感じるだけでは、大半の人にとって不正を行う動機にはなりません。次の段階に進み、違法行為を計画したり実行したりするには、ほとんどの人はまず罪悪感を取り除き、自分の行動を正当化するために、自分自身に対して自分の行動を理論的に説明するプロセスを経る必要があるのです。
この段階で彼らは、以下のようなことを自身に対して提言します。
- 「これをするのは家族のため」「チームのため」
- 「これを捕まえるのは監査役の仕事」
- 「まあまだ、エンロンほどひどくはない…」
- 「会社は私に借りがあるから」
- 「私の立場になると、他の人も同じことをするよ。もっとひどいことだってあるさ」
正当化を経て、不正行為予備軍はチャンスを探す
金銭的なプレッシャーを十分に感じていて、不正を働くのが「正当」であると自分に言い聞かせることに成功した人は、その機会を探し始めます。
そして、その後は他の人を自分の計画に参加させることにもなりがちです。不正は一般的に個人が思いつくものですが、多くの場合、従業員のグループや従業員とサプライヤーが協力して行うものです。
これはただの推測ではありません。従業員やサプライヤーの不正行為によって、FacebookやWells Fargoなど私たちが知っている大企業が何百万ドルもの損失を出したというというニュースが、 この1年にもありました。このような事件は金銭的損失だけでなく、ブランド価値の毀損にもなります。要するに、不正行為は思っている以上に頻繁に起こり、予想外の人物によって引き起こされる恐れがあるのです。
CoupaのSpend Guard-人間では網羅出来ない範囲をカバー
これらの課題に対処するために、CoupaはAIを搭載した不正防止および監査ソリューションとなるSpend Guardを開発しました。不正行為は“行動”に問題があるため、この問題への対策として行動パターンを追跡するツールが必要と考えました。
Spend Guardの高度なアルゴリズム、ユーザーレベルのプロファイリング、インフライト・トランザクション・コントロールは、その追跡を実現し、資金の横領やその他の不正を最小限に抑え、未然に阻止することを支援します。
Spend GuardはCoupaのプラットフォームに統合されているため、そのアルゴリズムは組織全体におけるユーザーの支出を監視し、疑わしい行動を特定します。この機能は、潜在的な不正行為を先回りして検知するために必要不可欠で、Coupa独自の監査検出における抜本的な転換となります。
Spend Guardの機能は、主に以下の3つの分野を中心に構成しています。
AIを活用した監査
従来の手作業による監査は非効率でコストが高く、大きな成果を得られませんでした。後から不正を発見する程度で、損失を取り戻すことは不可能ではないとしても極めて困難と言えます。
Spend GuardはAIによる自動監査を備え、あらゆる支出における異常な行動を監査担当者に知らせます。
Coupaの監査モデルはAIを活用した機械学習アルゴリズムを利用し、これらの活動を検出します。このアルゴリズムは、組織内での所在地、機能、年功序列に基づくユーザーの通常行動を自動的に学習し、さらにはCoupaのコミュニティから得たデータを活用して、異常行動をより効果的に検出します。
ユーザーレベルのプロファイリング
従来の監査技術にある問題点のひとつは、支出や契約違反など、業務の種類や活動別に限定して不正行動のチェックをしていたことです。しかし、コンプライアンス違反の経費を計上する従業員やサプライヤーは通常、1件の悪行では終わりません、多くの場合、初回は罰を逃れる傾向があります。
不正行為者は、自身が関与するあらゆる支出活動の中で機会を伺っており、やがては企業の口座からも、お金がどんどん失われていくことになるのです。Coupaによるユーザーレベルでのプロファイリングは、不正行為を検知、防止する包括的なアプローチを提供します。
インフライト・トランザクション・コントロール
Spend Guardは、不正な支出が発生した後に検知するだけでなく、不正支出を未然に防止し、阻止するための機能です。
Coupaでは、疑わしい取引にフラグを立て、承認前に追加で審査するインフライト・トランザクション・コントロールを提供しています。Spend Guardには自動制御機能が組み込まれており、すべての取引が適切な担当者によって適切なタイミングで検証されるように構成されています。
金銭的なプレッシャーを感じている一般的な従業員が、自身の考えを正当化するプロセスを通じて、不正行為に走ることがいかに簡単なのかを理解すれば、経営者は自社を不正から守ることができます。
Spend GuardはCoupaのBSM(ビジネス支出管理)プラットフォーム上に構築されており、企業の支出データが蓄積されていることで、実際のデータを元に包括的な支出不正を検出し、防止することを支援します。