2024年問題や脱炭素化の流れ、燃料費や人件費高騰などによる物流コスト増加など、企業の物流、運送業界を取り巻く環境は厳しさを増し続けています。本オンデマンドセミナーでは、昨今の物流を取り巻く環境を整理しつつ、企業として認識すべき課題や対策について事例やソリューションについて交えながら解説していきます。
無料視聴顧客企業の物流業務を包括的に受託する3PL事業
調達から、生産、販売・流通、アフターサービスまで――ロジスティードは、顧客企業の物流業務を包括的に受託する「3PL事業者」のリーディングカンパニーである。国内外に763拠点を展開し、およそ1万7,000台の車両を運用。物流センターの総面積は実に755万㎡を超える。だが、こうしたケーパビリティだけがロジスティードの強みではない。同社 営業開発本部 DX・イノベーション部 部長補佐の天春洋平氏は次のように話す。
「お客様とともに効率的な物流戦略を立案し、物流ネットワークを継続的に改善し、物流サービスをより高度に進化させ続けることに、ロジスティードの真価があると考えています。私たちが掲げる『LOGISTEED(ロジスティード)』というビジネスコンセプトには、先進的なテクノロジーを活用した独自の『スマートロジスティクス』や、業界の枠を超えたコラボレーションを通じて、新しいイノベーションの実現をめざす意思が込められています」
ロジスティードは、3PL事業の先駆者として1980年代より包括的なロジスティクスサービスを提供するとともに、その進化を通じて顧客価値を高めてきた。2020年には、物流の現場と営業開発におけるデジタル化への取り組みを統合するDX・イノベーション部を新設している。
「DX・イノベーション部では、お客様のサプライチェーンをデータ指向で高度化するためのサービス群を『SCDOS(エスシードス)』として体系化しました。その中軸となるサービスのひとつが『サプライチェーンデザインサービス』です。お客様のサプライチェーン上のデータを集約・分析し、膨大な組合せの中から、最適な物流拠点の配置や物流ネットワーク、輸送ルートなどをシミュレーションするものです。ここで活躍しているのが、CoupaのSupply Chain Design & Planningです」(天春氏)
激しさを増す競争環境をいかに勝ち抜くか
CoupaのSupply Chain Design & Planning(SCD&P)は、デジタルツインによって現実世界のサプライチェーンをシステム上で再現し、サプライチェーン全体の可視化、コスト評価、意思決定などを可能にする。物流ネットワーク、生産と在庫、輸送ルートの最適化を通じて利益を最大化するとともに、市場や為替など環境変化に伴う影響を予測して事業リスクを最小化することが可能だ。
「従来から取り組んできた『課題解決型のお客様提案』を発展させ、デジタルテクノロジーを活用したサプライチェーンデザインの最適化提案を推進しています。お客様のビジネス戦略、市場環境の変化、あるいは為替や気候の変動でも、最適なサプライチェーンデザインは変わっていきます。Coupa SCD&Pによる最適化シミュレーションは、経営判断を伴う拠点設置やルート変更を実施する前に、複数のシナリオでコストや効果を定量的に評価・検証できます」と天春氏は力を込める。
物流業界の競争は激しさを増しており、それは3PL領域も例外ではない。ドライバー不足への懸念も物流業界の課題を複雑化させている。ロジスティードでは、最適化の提案力を強化して競合との差別化を図りながら、顧客企業とのビジネスパートナーシップを強化するためにCoupa SCD&Pを活用している。
「Coupa SCD&Pによる最適化シミュレーションは、拠点の集約、新規拠点の設置、輸送能力の強化、在庫の低減といったテーマに対して適用可能です。お客様が、投資を決断する前に複数のシナリオを検証できること、導き出された数値により定量的に意思決定できることは、最適化シミュレーションならではのメリットです。物流部門のキーパーソンだけでなく、経営層にもアピールできるデータをCoupa SCD&Pによって導き出すことができます」(天春氏)
Coupa SCD&Pによる最適化シミュレーションは、拠点の集約、新規拠点の設置、輸送能力の強化、在庫の低減といったテーマに対して適用可能です。お客様が、投資を決断する前に複数のシナリオを検証できること、導き出された数値により定量的に意思決定できることは、最適化シミュレーションならではのメリットです。物流部門のキーパーソンだけでなく、経営層にもアピールできるデータをCoupa SCD&Pによって導き出すことができます 営業開発本部 DX・イノベーション部 部長補佐 天春(あまがす) 洋平 氏
トータルコスト10%削減、平均配送距離40%削減
ロジスティードでは、「サプライチェーンデザインサービス」を起点に自社3PL顧客へのプロアクティブな最適化提案を進め、新規顧客へ切り込むためのコンサルティングサービスも拡充させている。DX・イノベーション部 技師としてCoupa SCD&Pによるモデリングと最適化シミュレーションを担当する田中佑輔氏は次のように事例を紹介する。
「グローバルで1兆円を超えるビジネスを展開するスポーツアパレル企業の日本支社へ、新型コロナの影響による顧客需要の変化を捉えた物流ネットワークの最適化を提案しました。お客様の最大の課題はEC需要への急激なシフトです。店舗を中心とした販売がECへとシフトしたことで、ラストワンマイルの宅配便コストが急増していました」
チャーター便による輸送単価を1としたとき、路線便では2.2倍、消費者へ直接届ける宅配便では50倍以上のコストを要する。この顧客企業の日本国内での物流コストは年間50億円を超えており、店舗販売で不要だった消費者までの宅配便コストの負担は大きな痛手となっていた。
「これまでは、主要な需要地・店舗までの輸送コストを最小化するよう物流倉庫の立地を最適化してきました。これが宅配便へのシフトによって、需要地が北海道から沖縄まで広く分散してしまった形です。私たちは、Coupa SCD&Pによって『入出庫作業+保管+幹線輸送+配送のトータルコストを最小化』するシミュレーションを実行し、最適な物流倉庫の配置と輸送ネットワークを提案しました。10%のトータルコスト削減と、40%の平均配送距離の削減を可能にするものです」(田中氏)
さらに、天春氏、田中氏らは、コストを最小化するシミュレーション結果に対し、キャッシュ、サービスレベル、温室効果ガス排出量、オペレーションの難易度、変更実施の難易度を加味した現実的な提案を組み立てた。
「私たちが3PL事業者としてお客様を深く理解していること、物流の現場で生まれる様々なデータを活用できることに加え、Coupa SCD&Pというツールを利用することで、よりお客様価値の高いユニークな提案が可能になりました。さらに、最適化シミュレーションの結果を現場に実装し、3PLのオペレーションに反映しながら具体的な成果につなげていけることが、物流の現場を知り尽くしたロジスティードの強みです」(天春氏)
あらゆる顧客ニーズに対応する柔軟なモデリング
Coupa SCD&Pによる最適化シミュレーションは、現状のサプライチェーンロジスティクスを「モデル化」することから始まる。
「お客様によってサプライチェーンの基本設計や構造は大きく異なりますが、Coupa SCD&Pに用意されている豊富なテンプレートを利用することで、これを正確に再現することができます。作成した基本モデルに現状の需要量を投入したとき、現状のコストを正しく計算できる状態に整えることがスタートラインです。トラックサイズごとの輸送単価や、物流拠点間あるいは拠点から納品先までの実経路の距離や移動時間などをCoupa SCD&Pに入力し、モデルを精緻化していきます」と田中氏は説明する。
最適化シミュレーションは「モデルの精度」が計算結果を大きく左右するため、直線距離に係数を掛けるような近似的な方法を採らないことが田中氏のこだわりだ。物流のプロフェッショナルであるロジスティードならではの高精度のモデル構築には定評がある。
「完成したモデルに対して、要件や制約条件が変わったときに最適な拠点配置や物流ネットワークがどう変わるのか、複数のシナリオでシミュレーションを実行します。Coupa SCD&Pはクラウド上のリソースを使って効率よく並列計算を行いますので、ひと晩の計算で多数のシナリオのシミュレーション結果を同時に得ることができます。また、BIツールとシームレスに連携できるので提案資料に使用するための可視化も容易です」(田中氏)
DX・イノベーション部のさらなる挑戦は、物流領域で培った豊富な経験・知見を基盤にした「顧客企業のサプライチェーン全体を対象にした最適化とデジタル変革」の実現である。そのために、全社統合的なデジタルデータ基盤を整備し、継続的な最適化と評価・改善のサイクルを実行し、調達・生産領域でのパートナーとの協創も拡充させている。天春氏は次のように結んだ。
「ロジスティードグループ全社のケーパビリティを最大限活かして、新しいシェアリングモデルを提案してお客様ごとの3PLサプライチェーンロジスティクスを改善する方法を検討しています。そのためには、全社のリソースを俯瞰的に捉えた最適化が不可欠であり、この構想を計画・実行に移すにあたってCoupa SCD&Pによる最適化シミュレーションが威力を発揮してくれるはずです。Coupa社には、これからも私たちのテクノロジーとビジネスのパートナーとして協創に取り組んでもらえることを期待しています」
本記事の内容、所属部署、役職名については2022年7月取材当時のものです。
Coupa SCD&Pはクラウド上のリソースを使って効率よく並列計算を行いますので、ひと晩の計算で多数のシナリオのシミュレーション結果を同時に得ることができます。 営業開発本部 DX・イノベーション部 師 田中 佑輔 氏