本記事は「Understanding Margin Erosion: Causes, Impact, and Prevention for CFOs」の翻訳です。

 

経済情勢がますます複雑な様相を呈し、企業間の競争が激しくなっていく中で、企業の最高財務責任者(CFO)は自社の利益を最大化するという重大な責任を課せられています。 市場の動向が絶えず変化するなか、企業のCFOが真っ向から取り組まなければならない難題のひとつが利益減少です。 CFOが自社の純利益を確保し、短期的にも中長期的にも良好な財務状況を維持できるよう模索していく上で、利益減少につながる要因とは何かを理解し、回避する方法を知ることはきわめて重要です。

この記事では、利益減少につながる要因とは何かを明らかにした後、その根本的な原因について、内的要因と外的要因の両面から検討します。 また、利益減少を防ぎ、利益を確保して成長を可能にする上で、財務部門の責任者が取るべき対策や効果的な手法を解説していきます。

利益減少とは何か。どのように計算されるのか。

ここで取り上げる「利益減少」とは、ビジネスの世界で使われる「Margin Erosion (マージンの浸食)」を、わかりやすい日本語に置き換えたものです。CFOは、この言葉の意味合いを正しく理解することが必要になります。 企業の利益率が良好または健全であると判断する基準は、業種や製品、企業の経営目標などにより異なりますが、 類似の同業他社の利益率と、同程度か、それ以上であることが理想です。 しかし、現在はほとんどの業種で、利益率が低下し、得られる利益が減少しています。 端的に言うと、利益減少とは、企業の利益率が時間の経過と共に少しずつ減少していくことであり、以下の計算式で求められる割合が小さくなっていくことを指します。

利益率= (収益-売上原価) / 収益

利益減少が起きるのは、価格を上回るスピードでコストが上昇し、営業活動による収益にその影響が割り込んだときです。 このような状態に陥ると、製造原価と収益の差が小さくなっていき、最終的には利益率が低下していきます。 利益の減少は、純利益や長期的な持続可能性に直接影響し、企業にとっての大きな不安材料となります。

利益減少につながる要因と、ビジネスへの影響

現代のマクロ経済の見通しの悪さ(具体的には、不安定な経済情勢や地政学的状況、金融情勢の悪化、原価の高騰、予測不能な経営リスクの増大、インフレーションなど)を踏まえると、経済構造の変化が利益減少の大きな要因となっています。 これまでの事業運営の枠組みでは、企業の利益と成長における課題や問題に対応できず、現代の変化のスピードには追い付けません。

Coupaが実施した2024年CFO戦略調査によると、90%のCFOが、自社の収益目標の達成に不安を感じています。

企業が直面する利益率低下の原因には、社内のIT戦略や使用するシステムが時代遅れであるなど、内部的な要因もあります。 連携しない複雑な業務プロセスでは、事業運営のコスト、経費やミスが増大します。 例えば、発注書や請求書の手作業による処理、請求書や経費レポートの承認に要する長いサイクルタイム、手作業による支払処理は、いずれも利益の足を引っ張る要因となります。 効果のないコスト管理や、合理化できていないプロセスは、理想と現実の間に立ちはだかる壁となります。 これらの要因のひとつひとつが利益を削り、 企業の利益減少につながる要因となっていくのです。

事業運営のあるべき姿と、複雑な作業を行う現実の事業運営の姿のギャップが、利益減少につながる要因となります。 多くの企業は、目の前の事業運営に追われ、そのギャップがどこにあるのかを把握できず、何も対処できない日々を続け、利益減少につながる要因を大きくしています。

利益の減少は、連鎖的に発生します。 コストの増大と社外の不安定要素への対応で手一杯の企業では、これまで成長の原資としてきた運転資金の利用が限られています。 サードパーティとの関係とコストにも圧力がかかり、CFOは成長のための資金調達の方法を他に探さざるを得なくなっています。

その結果、組織のスピードが落ち、混乱への対応が遅れ、競争力が低下していきます。 このギャップがあることで、重大な問いの答えをCFOは簡単に出すことができなくなります。たとえば「人員削減以外に、どこで資金を解放するのか?」といった問いです。

短期的な対策では利益減少を防げないことが明らかになっています。そこで、利益を生み出す成長を確実にするための、 信頼でき、持続可能で、包括的なアプローチである総支出管理が脚光を浴びつつあります。 売上予測が難しい現状で、CFOをはじめとする財務責任者たちは、社内で管理できるものに注目しています。それは、突発的な外的リスクに直面しても、利益の確保と成長を可能にする、テクノロジーとプロセスです。

AI技術で、利益を守り拡大する

利益減少を防ぎ、このギャップを解消するには、利益を拡大するしくみが必要です。 利益拡大のしくみを導入することで、小さな変化が積み重なり大きな変化を生むことができます。 事業運営モデルへの改善や向上が行われると、その積み重ねが利益に大きな効果をもたらします。そして、組織のさまざまな領域で、利益拡大が実現します。

この利益拡大のしくみでは、次の5つの領域での課題を解消し、その効果を促進します。

  • 効率性: サプライヤーを正しく選定し、調達に関してスマートな意思決定を行い、従業員の購買を最適化することで、財務責任者は効率化を達成し、経費を大幅に削減できます。
  • 生産性: わかりやすく使いやすいUXにより、業務が速く遂行できるようになったことで、財務部門が戦略性の高い業務に集中できるようになります。 例えば、承認サイクルを短縮して財務部門での時間と費用を節減でき、 生産性の向上につながります。
  • サステナビリティ: ESGやDEIに関する目標を達成し、カーボンフットプリントの削減につながるサプライヤー選択を行うことで、サプライチェーンを最適化でき、サステナビリティの向上を実現できます。
  • レジリエンス: 生産ラインの停止や金融機関の破綻といった混乱が生じたときには、現実的な代替案を判断して実行し、事業運営への影響を最小限に抑えられる高度なプラットフォームが必要になります。 レジリエンスを強化することで、事業の継続が困難になるリスクを軽減できます。
  • 成長: 企業の成長には、キャッシュフローの増加が必要です。 利益率が低い業界や、成長に必要な環境が整っていない業界では、コストや利益のコントロールが収益の成長に必要です。 これらの効果がすべて積み重なり、結果として成長の加速につながります。

これらの領域の利益拡大の効果によって、例えば、販売および一般管理(SG&A)の経費や事業運営コストを、製品の研究開発(R&D)や営業やマーケティングによる収益生成に回すことができるようになります。

では、変化の激しい現代のビジネス環境において、利益拡大のしくみを導入するにはどうすればよいのでしょうか。 その答えのひとつとなるのが、AI技術の進歩です。 AI技術により、膨大なデータ処理、ヒューマンエラーの防止、定型的な業務の自動化が可能になりました。 その結果、問題が増え、制約が厳しくなり、見通しが悪く不安定な現代でも、財務責任者は事業の成果と意思決定の精度を確実に向上させられるようになったのです。

とはいえ、AIであれば何でも同じというわけではありません。 正しいデータの選択が重要になります。スマートな意思決定を支援するAIソリューションの精度は、データの質に依存するからです。 インターネットのスクレ―ピングやアンケート調査で収集したデータ、収集期間が数か月のデータ、限られた数の顧客のデータ、公開LLMを介したデータなど、制限のあるデータを使っては、AIドリブンソリューションのトレーニングにも限界があり、最終的に企業が利益減少から脱却することはできません。

だからこそ、組織が使用するデータを理解することが極めて重要になります。 例えば、そのデータがパブリックドメインのものか、自社専有しているか、どこで入手したか、どれほどの量があるか、セキュアで機密性が高いかなどを把握することが必要です。 結局のところ、データの質が良くなければ、AIの精度も上がりません(詳しくは後述します)。

Coupaが利益拡大と成長を支援した事例を紹介

Coupaには、利益の拡大と成長の促進を可能にするデータがあります。このデータは、何千社もの顧客と何百万社ものサプライヤーから、何年にもわたって安全かつ倫理的に収集されセキュアに保管されたもので、プライベートな大規模言語モデル(LLM)でのみ使用されています。

利益の拡大は、Coupaコミュニティのデータに支えられたAIの複利効果を利用することで実現できます。このAIのトレーニングには、顧客企業とサプライヤーの約1,000万社のネットワークにおいて、世界から15年以上にわたってリアルタイムに収集された6兆ドル以上の取引支出データが使われています。 Coupaはお客様とともに、世界中のあらゆる規模のあらゆる業界の企業から取得されたデータを利用し、AIとして認知される前からAIとともに歩んできました。 購買と承認から請求書や契約に至るまで、そして各処理の連携に関わるすべてのデータが、Coupaコミュニティが作り出した優位性であり、Coupaのプラットフォームの基盤となっています。

Coupaコミュニティのデータに支えられたAIがあれば、利益拡大を実現できます。予測型インサイト、改善につながる意思決定、アクションの自動化といった機能は、Coupaが10年以上にわたってお客様とともに構築し、改良を重ねてきたものです。 また、CoupaのAIモデルが提示するものは、各種ベストプラクティスに基づいたものであり、具体的で信頼性が高く、すぐに実行することができます。 このAIが支えるCoupaの総支出管理プラットフォームは、企業の経営モデルの最適化と、先述の5つの領域(効率性、生産性、レジリエンス、サステナビリティ、成長)における利益成長を支援する、広範で深い機能性を擁しています。

経済構造の変化が進み、課題が複雑になっていく状況で、爆発的に増加するデータ需要とサプライチェーンのシグナルに対応すべく、Coupaの先進のプラットフォームがますます必要とされています。

 Coupaのプラットフォームは、コスト削減や効率化の機会を特定するだけでなく、混乱の予測と回避を可能にします。 加えて、審査をクリアした1,000万社を超えるサプライヤーのネットワーク、スピーディなサプライヤー登録、事前交渉済みの契約、そしてすぐに使えるカタログを通じて、コスト削減を支援します。 Coupaの高度なAIドリブンプラットフォームが、利益減少に対する最大の防波堤となります。

先進の企業では、Coupaのプラットフォームを利用して、利益拡大を実現し、それぞれの目的を達成しています。

  • Novo Nordisk – 2型糖尿病治療薬のオゼンピックを製造しているデンマークの製薬会社である同社は、節減から得られた資金を研究活動に再投資しています。 Coupaの導入前は、実験器具の購入が難しかったため、研究職の従業員による購買フローへの定着が進まず、支出漏洩(未承認のサプライヤーからの購入)が後を絶ちませんでした。 また、複数の連携しないソリューションを導入していたことでデータのサイロ化を招き、可視化が遅れていました。 Coupaの導入後は、社内全体のDXにより5,000万ユーロの削減を達成しました。 Coupaにより、購買業務で節減できた資金を研究開発(R&D)に回せるようになったことで、同社は成長を加速することができました。
  • アストラゼネカ – 研究職の従業員によるレガシーの購買システムへの定着が世界の拠点で進まず、支出の把握が困難になっていました。 トラブルシューティングが発生し、手作業によるデータ入力も多かったため、申請書の承認や請求書処理に多額のコストがかさんでいました。 Coupaの導入により、請求書の承認にかかる時間が60日から4.5日に短縮されたことで、同社は購買業務の生産性を93%向上させることができました。
  • P&G – Coupaの導入前は、購買プロセスの遅れにより製品の市場投入が滞る一方で、使いづらいレガシーシステムのメンテナンスにコストがかさんでいました。 Coupaを導入することで効率化が進み、発注書と請求書の照合を速く行えるようになり、サイクルタイムを数日単位から数時間単位に短縮しました。これにより、合計10億ドルの節減を達成しました。
  • マイクロソフト – 「2030年までにカーボンネガティブ(温室効果ガスの排出量より吸収量が多い状態)、ウォーターポジティブ(水の消費量より供給量が多い状態)、廃棄物ゼロを実現」という目標を掲げる同社にとって、 Coupaはサステナビリティ向上の要となっています。Coupaの導入により、効率性、革新性、サステナビリティの高いグローバルクラウド物流ネットワークを構築し維持できるようになったからです。 これを実践する上で、コスト、二酸化炭素排出量、サイクルタイムに基づくデータドリブンな意思決定をインテリジェントに行っています。 また、Coupaの導入後は、数億ドル単位のコストの削減機会が明らかになったほか、ハードウェアのサプライチェーンの二酸化炭素排出量が60%減少しました。
  • 米国赤十字社 – 非効率な手作業の処理により、支出データの可視化と管理に苦労していた非営利団体の同社は、 多様性と包摂性(D&I)の目標の達成においても課題を抱えていました。 Coupaの導入により、多様性を重視するサプライヤーへの支出が35%増加し、サステナビリティの向上を達成したほか、 1,500万ドルのコスト削減に成功し、運転資金を400万ドル増やすことができました。

Coupaコミュニティの成長に伴い、多様で複合的なデータが収集されることで、誰もがスマートで戦略的な意思決定を行えるようになります。 そして、利益を拡大できるようになります。

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