業務の効率化・高度化、コストダウン、コンプライアンス遵守などを同時に実現

三菱重工といえば、エンジニアリング業界を代表するグローバルリーダー。エナジードメイン、プラント・インフラドメイン、物流・冷熱・ドライブシステムドメイン、原子力セグメント、機械システムセグメント、防衛・宇宙セグメント、民間機セグメントの事業ドメイン構成の基、幅広く事業を展開し、2040年までのカーボンニュートラル達成を目標にするなど脱炭素に向けた取り組みも加速化しています。

全世界に400拠点を擁し、グローバルにシナジー効果を発揮しながら事業を展開する同グループながら、「間接費購入に関しては間接費調達プラットフォームや間接費購買契約が個社ごとに異なるという課題を抱えていました」と白神氏は明かします。

国内グループ会社では共通して利用していた間接費調達プラットフォームがあったものの、海外ではプラットフォームはなし。購買契約については国内では本社で一部品目を集中購買し、各事業所で大半の品目を契約、カタログ化していたものの海外では会社ごとに契約、購入。グループとして十分な統制がとれているとは言えない状態だったといいます。

そこで、2017年、間接費調達のグローバルプラットフォームを選定するにあたり、調達プロセスの標準化・効率化、コスト削減などの狙いに照らし合わせ、Coupaに白羽の矢を立てます。

「従来はグループ会社ごとにバラバラのシステム、紙やメールで個別に取引発注をしていました」と白神氏。それをCoupa導入により、まずは間接費調達プラットフォームに統一。併せて各グループ会社が個々に購入するのではなく、本社の購買シェアド組織で間接費調達を一元的に扱う体制変更なども進めます(下図)。

19年度に北米・欧州から導入を開始、その結果をもとに2020年度、国内を含めたグローバル展開がグループ内で承認。日本ではまず2社にパイロット導入し、国内での導入の標準化、Coupaを活用した業務プロセスの設計を実施し、国内50社に一気に導入を推進。2021年度時点で、導入グループ企業は70社、ユーザー数は約9000人に上ります。

「現在進行形ではありますが、Coupaを導入したことで、狙いとしていた業務の効率化やコストダウン、コンプライアンス遵守、ペーパーレス化などの同時実現を達成しつつあります」と白神氏は語ります。

具体的な活用メリットの一つに挙げるのが、取引先からの請求書の電子化。カタログを充実させ、取引先へのCoupa参画の推進により、電子請求書率が94%と高い数字を達成しています。

「Coupaの電子請求書は情報の自動照合が実現するため、請求書の記載情報の社内登録などの作業も一切不要になりました」

その他、海外グループ会社からも下図のような声が寄せられており、Coupaが業務効率化などに大きく寄与していることがうかがえます。

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国・エリアによって異なる法規制にも対応しつつ、導入作業の標準化を推進

関わるステークホルダーは調達部門だけでなくIT、経理、総務部門など幅広く、取引先も多岐に渡る同グループ。「大勢のメンバーを巻き込んだ一大プロジェクトになりました」と白神氏。導入段階での課題、それに対する打ち手について以下のように紹介します。

1 事業内容、顧客が多様な三菱重工グループ全体への導入推進

新しいシステム導入に際しては必ず否定的な声も挙がるもの。「各企業トップの理解を得ながら、トップダウン方式でガバナンスを効かせつつ導入を推進しました」

2 SaaSに馴染みのない取引先へのCoupaの促進

三菱重工ホームページでの案内、説明会開催、Coupa紹介資料の充実化などにより、「地道にCoupa参画を進めました」。

課題3 異なる会計システムとCoupaのデータ連携作業

グループ企業によって会計システムのインスタンスがまちまちで、Coupaとのデータ連携作業に手間がかかっていたとのこと。そこで、「本社で作りこむ部分」と「グループ会社側で作りこむ部分」を区分けし、作業を標準化することで、迅速な導入を実現したといいます。

課題4 複数企業への並行導入

2020年度は国内グループ約40社に平行導入を推進。業務輻輳が予想されたため、「社内プロジェクトマネジメント部門と連携し、導入の低コスト化、期間短縮を実現しました」

課題5 各国法規制(税法・商慣習)に対応した導入・設定作業

各国別の要件、法律に従った請求書フォームへのカスタマイズについては、「米国・欧州等でローカルチームを編成し対応策を検討。Coupaの国別対応モジュールを活用しました」。

 

問い合わせや膨大な登録作業にはテクノロジーや外部リソースを活用

いざ運用がスタートすると、下スライドのように大量の問い合わせや膨大な登録作業への対応が課題に。AIチャットボットの活用など自動化、仕組み化を図るほか、「各種登録作業では、業務委託先の株式会社HIPUS社とも連携し、業務効率化を推進しました」。

さらに、米州、欧州、国内のグループ会社の並行導入の推進に当たっては、以下のような体制を構築。「プログラムと呼ばれる三菱重工本社のメンバーを中心としたチームにより、Coupa導入手法の標準化を行うとともに、間接費の購買プロセスについて調達、IT、経理部門が中心となり、運用ルールなどを制定しました」。

想定外の事象も少なからず発生したものの、各国・地域のプロジェクトチームとの連携を強化し、プロジェクトマネジメント手法により各導入グループ会社のスケジュール、コスト評価指標を使って管理。こうした管理体制の構築により、想定外のシーンにも早期にバックアップ策を打つことができたといいます。

今後の課題・取組み方針として、アジア・中国のグループ企業への導入拡大や、Coupaの契約管理モジュールと電子署名ソフトを組み合わせた契約書のペーパーレス化、間接費におけるCoupa利用範囲の拡大などを挙げる白神氏。

自社グループ内だけでなく、「国内のCoupaユーザー企業、取引先の皆様とも連携し、Coupaプラットフォームをより良く活用し、WinWinの関係をさらに深めることができればと考えています」と提言。グローバルに調達プラットフォームの統一、効率化を検討する多くの企業にとって大いに参考になる事例といえそうです。