2030年の業容倍増を目指し、DXに着手

小関 御社は2019年からデジタル変革に着手されたそうですね。その背景をお伺いできますか。

 

高原 弊社は、2020年に、「Innovation for the earth」をビジョンステートメントにした長期ビジョンを掲げました。ESG経営を中心においた革新と創造によって、社会課題解決への貢献を拡大し、2030年に業容倍増することを目指しています。具体的には売上高が約2兆円、営業利益が約10%です。

中期経営計画「Drive2022」では、長期ビジョンを達成するためのドライブとして、「成長と変革」「長期への仕込み」「経営基盤強化」の3つを挙げました。これらを加速させるためにはDXが必要だと考えました。

小関 具体的にはどうDXを進められたのでしょうか。

 

高原 まずは、全社的なデジタル変革を中長期的に下支えする組織として、デジタル変革推進部を18人で立ち上げました。2年目からは、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックスの3カンパニーにもデジタル変革推進部署を設け、各10~20名がDX推進に取り組んでいます。

DXのテーマは「グローバル経営基盤の強化」「購買」「営業・マーケティング 」「リモートワーク」の4つ。なかでも「購買」に先行して乗り出しました。

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購買から始めた狙いは「次なるDX原資の獲得」と「DXへの求心力の獲得」

小関 最初の取り組みとして「購買」を選んだのが非常に興味深いですね。なぜ購買を?

 

高原 理由はいくつかあります。1つは「次なるDX原資の獲得」です。DXによって経営基盤を変えるとなると、非常に資金がかかります。その原資を確保するには、最初にコスト削減などの結果がすぐに出る分野から始めるべきと判断しました。

2つ目は「DXへの求心力の獲得」です。DXに対して不安感を覚える現場の方々は少なくありません。しかしメリットが分かりやすく見えれば、現場の方も納得し、DXを進めても良いと感じるでしょう。その点、購買はメリットが分かりやすいのがポイントです。

さらに「ガバナンスの強化」をする上でも、安心して購買活動ができる環境の構築が必要と考えました。

即効性のある施策から実行する

小関 DXの長い旅の第一歩は購買が適しているわけですね。購買改革はどのように進められたのでしょうか。

 

高原 100以上のカテゴリーでコスト削減効果を試算し、「間接材購買金額5~10%削減」という目標を設定。達成に向け、3つのステップで購買改革を進めることにしました。

第1ステップは、即効性のある施策を実施すること。具体的にはカタログ購買の推進です。間接材の購買に関して全社が共通のカタログを使えば、積水化学グループ全体のスケールメリットを生かして、間接材を安く購入できます。また個別の交渉がなくなるので、非常に効率良く仕事が進められます。加えて、これまで蓄積していなかった購買データの蓄積にも取り組みました。

データを蓄積したところで、第2ステップへ。データを使って、購買に関するさまざまな比較ができ、適正価格での購入をサプライヤーと交渉できるようになります。

第3ステップでは、全社的にデータを活用して、購買力をさらに向上させます。キーワードは「集約化」。小さな部品でも仕様や品番が複数あるので、できるだけ統一することで、購買のあり方を大きく変えていけると考えました。

現場の不安に丁寧に向き合うことで、1年目から効果が

小関 改革は順調に進まれたのでしょうか?

 

高原 手始めに第1ステップをモデル工場だけでおこなったところ、1年間で、コスト削減や業務効率化の効果が出ました。カタログ購買により、ものによっては最大20%のコストダウンを実現。工場ごとに行っていた個別の価格交渉を現場がする必要がなくなり、業務の負荷も軽減できました。

 

小関 御社のように売上高が大きく、購買力がある企業でも、カタログ購買によってさらにスケールメリットを享受できるわけですね。

 

高原 ただ、当初、モデル工場でのステップは半年の予定が、実際は倍の時間がかかっています。

 

理由は、先述したように、DXに関して工場の現場で働く方々が大きな不安を抱いていたことです。その不安には丁寧に向き合う必要があると考え、デジタル変革推進部がサポートしました。

例えば、工場の現場にデジタル購買を導入する過程で、従来の購買業務と新しい購買業務が混在することがありました。そこで現場の方たちに過大な負荷がかからないよう、デジタル変革推進部の人材をモデル工場に派遣し、実務をサポートしました。
時間をかけ、現場の方たちとの信頼関係を築いたことで、改革が進み、確実に結果が出ることをモデル工場で示せました。

 

小関 改革を成功させる大きな鍵は、現場で働く皆様にご納得いただけるかどうか。非常に参考になります。

 

高原 DXを2年間社内で言い続けて、購買で成果をあげたことで、今では社員の意識が変わり、より会社の利益を意識して購買活動が行われるようになりました。

こうした情報が他の拠点にも波及していくことで、DXや購買に関する意識改革が、さらに加速していくと考えています。これから2年間で購買のDXを国内50拠点に展開する上で、良い風が吹いてきたと感じています。

(右)積水化学工業株式会社 高原徹氏 (左)Coupa株式会社 小関貴志

デジタル購買改革は分かりやすい取り組み

小関 購買改革で原資を確保した上で、さらに別の領域に取り組むというお考えだったとうかがっています。今後の進捗予定をお聞かせください。

 

高原 今はデジタル購買改革の第1のステップを一部の工場で実践した段階で、ここからが本番です。全社的にカタログ購買システムが本格稼働することで、データが蓄積され、そのデータを使って比較購買が進み、最終的には集約化する。ここまで早く到達したいと考えています。

そして2年後からは購買改革をグローバルに展開します。必ずやりきって積水化学のグローバルでの競争力を高めることに貢献したい。その先に次の展開が見えてくると考えています。

デジタル購買改革は、全社員に「DXとは何か」を伝える上で、すごく分かりやすい取り組みだと捉えています。スピード感を持って効果を実感できる観点から、他の企業の皆様にもおすすめしたいですね。

 

小関 貴重な知見の共有、ありがとうございました。

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